2016-01-01から1年間の記事一覧
備忘メモ 1.神仏分離の影響をもっとも強く受けたのが、修験 神道とも仏教とも区別しがたい行法、呪術。そこに神仏分離が持ち込まれれば、 信仰の内実そのものが失われる。 とりわけ、佐渡の場合は、本山派六十八か院のうち三か院が還俗神勤したほかは、 こ…
以下は備忘メモ。 明治の世の「一村一社」(神社の統廃合)について、熊楠は強く異を唱え、「神社合祀に関する意見」を書いてる。第一 合祀の結果、産土神が往復山道一里乃至五里、はなはだしきは十里も歩まねば詣で得ずとあっては、老少婦人や貧人は、神を…
照手姫は、売られた先の美濃・青墓の遊女の宿の主から、懇願の末に五日間の暇をもらい、 青墓宿から大津・関寺まで、亡き夫の供養のためにと、 えいさらえい、一引き引きては千僧供養、二引き引いては万僧供養、 体の腐れ果てた餓鬼阿弥の乗る土車を引いてゆ…
昨日、私のもとにやってきた本。 ロケットの正午とは、ピンチョン曰く―― 「影が東北に傾くとき、(ナチスの)ベーネミュンデの基地から試作ロケットが発射される。遅れてきた正午のサイレンのように、辺りにその音が響き渡る瞬間を、人は「ロケットの正午」…
と、『ワンダーボーイ』を読み終えて、不意に思い出した。 父を亡くした少年は、 (大切な人を失くした少年は) 3000億の星がある銀河で唯一生命体があると確認されている地球にあって、 (つまり、3000億分の1の孤独の星である地球で)、 これまで…
「三月には都城十二門の中、九つの門に犬を磔にして春気を送るのである。このようにしないと犬の禍がある。犬は金畜であるから、この犬を九門に磔にするのは「金剋木」の相剋の理によって、金気を抑えて木気を扶け、木気である春の功を遂げさせ、三月という…
『山の神』を読むうちに思い出したこと。吉野裕子は、古代日本人は自然・人工を問わず、数多くのものを祖霊の蛇に見立てたという。自然物のうち、最大のものは山。多くの場合は円錐形の山。また、『古事記』の万物生成神話のなかで山の神誕生に関するものは…
戦後日本で、沖縄のさらに南の八重山の小さな島・石垣島で起きていた出来事は、同時期、朝鮮の済州島で起きていた凄惨な事件ともつながる、その後の、民主主義の使者として米軍が乗り込んでいったあらゆる場所にもつながる。島だからこそ、あらわに見えるこ…
連休中は、八王子駅前の放射線通りで、八王子古本市。 『韓国の民間信仰』(張寿根著)資料編、論考編を購入。済州島の巫俗を詳細に論じた2冊。 論考編第一節 島勢概要に、島の創世神話の女神 ソルムンデハルマン(ソルムンデ姥)が登場。 「巨人婆様が土を…
沈黙、それは言葉だ。沈黙している間、待っているのは簡単なことだ。だって言葉では村を作ることが出来るが、沈黙なら、お! 世界を創ることが出来る。それに、言葉の中にも同じだけの沈黙があり、沈黙の中にも言葉がある。
この絵本に登場する「彼ら」には、瞳がない。体も輪郭しかない。時には「彼ら」の体は透けて、むこう側が見えそうでもある。 「彼ら」は、済州島4・3事件の渦中の人びととして、絵本『木のはんこ」の中で描かれる。 済州4・3。それは、アメリカを後ろ盾…
流れる水。 新しい世界への水路。ル・クレジオ『ラガ』。訳者の管啓次郎さんが、こんなことを書いている。「文学の大きな役割が、世界を重層的に想像することの手助けだとしたら、そして追いつめられ窒息しそうな人々の別の生き方、別の世界のあり方をしめす…
聴取することが思考することでありつづけるためには、語られざるものが必要なのです。あるいは真理(あるいは神の言葉)が聴くものを憔悴させないためには、言葉はまた語られざることでみなければならないのです。レヴィナス『聖句の彼方』より。
つた、つた、つた。二上山に葬られた死者(大津皇子)は、それが大津皇子とも知らず、二上山に浮かび上がるその俤に引き寄せられて、奈良の都から葛城の当麻寺まで漂い出て、当麻寺のわきの廬堂にこもった藤原の郎女(中将姫)を訪う。死者の呼び声に応える…
自分のなかで曖昧であったり、分かっているつもりだったことをあらためて知る読書。 「音速より速く戦闘機や武器がやってくるというのに、耳を傾ける時間もないような多くの言葉を並べ立てることに、なんの意味があるというのか」 いま日本で安倍政権が行っ…
理解することは、生きることのすぐれて人間的なありかたである。人間は誰もが世界と和解する必要があるからである。世界とは、人がそこに余所者として生まれ、他と異なるその唯一性を失わないかぎり余所者にとどまりつづける場所である。 理解は誕生とともに…
昨夜の朗読劇「ディブック」上演前に、ユダヤのハシディズム(ユダヤ教敬虔派)の概略を進行役の赤尾光春さんが解説する際に、「タルムードの学習に偏重したラビ・ユダヤ教のエリート主義を批判し、無学な者も祈り、歌、踊りといった日常的な所作を通じて神…
ユダヤの民間伝承に伝わる悪霊ディブックの伝説を下敷きに、「前世の契りによって結ばれた若い男女が辿る悲劇を描いたユダヤ演劇史上もっとも有名な戯曲」とパンフレットにある。2時間弱の長丁場。 生者も死者も同等に扱われるユダヤの律法による裁きの場。 …
岡野八代による、ジュディス・バトラーの言葉の引用。 このバトラーの言葉の背後には、レヴィナスがいる。 「ある特殊な仕方で、そして矛盾を孕みつつ、わたしたちの責任/応答可能性は、いったん他者の暴力に服従させられてしまったときにこそ、高められる…
と、帯にある。この本を著者が執筆した2015年の、「日本の政治構造を根本から転覆する第二次安倍晋三内閣の憲法破壊政治が、世界大に展開する合衆国の軍事行動と軌を一にした動き」であるという状況の中で、 著者はその暴力の連鎖のはじまりの地点として、20…
「山椒太夫」の物語を追って、福島へと旅したのは昨年10月のこと。 福島市内の弁天山には安寿・厨子王とその父と母の居城があったという「椿館(つばきだて)」があり、そこからは福島市内が一望のもとに見渡せる。この弁天山から「信夫細道」という古道が福…
1月24日 鎌倉公演をもって、「新春猿八まつり」終了。 人形浄瑠璃猿八座の3日間にわたる公演は毎回満員御礼。熱気の中で人形たちが泣き、笑い、舞った。この初春の催しのなかで、猿八座の渡部八太夫師匠が、「あやかしの夜」と銘打って、 素浄瑠璃で猿八座の…
昨年末のこと、 植民地期に日本に渡り、九州でドサ回りの大衆芝居の一座に加わり、短期間だが浪曲師として活動し、周囲にみずからの出自を明かすこともなく1953年にこの世を去ったある朝鮮人の男性の故郷を探し出し、訪ねる旅をした。名もなく異郷で果てた彼…