2017-01-01から1年間の記事一覧

それは金石範の営為でもある

私たちは、死者に正義を還さなければならない。 by パトリック・シャモワゾー 『思想としての朝鮮籍』(中村一成著 岩波書店)より

2017年7月2日は東中野・ポレポレ坐へ!

1年半ぶりに、佐渡・猿八を本拠地とする人形浄瑠璃一座 猿八座の東京公演です。しかも、400年ぶりに猿八座によって復活上演された「山椒太夫」全6段のうち、見せ場を選り抜き、4段を上演。 (全6段公演は、新潟県上越市高田の世界館にて毎年4月に催さ…

第一章 「戦後日本」に抗する戦後思想(中野敏男)

【問題提起】 1.そもそも、本当に、敗戦によって日本は大きく生まれ変わったのか?2.「天皇制」を戴く民主国家、日米安保体制とセットの「平和主義」、戦争が生みだした特需で繁栄を経済復興を成し遂げた「基地国家」、という現実と、「平和と民主主義」…

文藝2017夏号 特別対談  赤坂憲雄×小森陽一「東北独立宣言(とーほぐどぐりつすんべ)― 井上ひさしをめぐる地方・言葉・文学」

この対話を読んで、あらためて日本の近代って、何だったのか、民主主義って何だっだのか、をつくづくと考えた。たとえば、宮本常一が『忘れられた日本人』で描いた村共同体、村の寄り合い民主主義というものがある、それが根を断ち切られ、近代という仕組み…

『平成山椒太夫 あんじゅあんじゅさまよい安寿』(せりか書房)をめぐって

新潟日報 2017年3月26日書評面「ほんを語る」より。 「旅する作家の姜さんは、名もなき人の話を聞き、聞いた言葉を「声で書きたい」という。」 「「声で書く」とは、語りを通して一人一人の記憶を呼び出し、それぞれの物語が生きる場をつくること」

『旅行記』前・後編(佐藤貢 iTohen PRESS)

昨日、下北沢のB&Bで購入して、深夜から軽い気持ちで読みはじめて、途中でやめられなくなり、一気読み。書かれているのは、中国からパキスタン、インド、ネパールを経てチベットに至り、そして中国を抜けて帰国する9か月に及ぶアジア漂泊の旅。でも、これ…

 タルコフスキー『ノスタルジア』を観た

「心を込めて祈りなさい。上の空では何も起こらない」 最初にそう言うのです。 イタリアのシエーナの教会の「ただの監視人」が。あるいは、この物語の道化が。 そう、ただの人が、監視人のような、郵便配達のような人(これは『サクリファイス』に登場する道…

ふたたび近松、そして上田秋成、あるいは文学における近代について。

上田秋成の「狐」を語って、江藤淳いわく、作家を変身させたり回心させたりするのはイデオロギーではない。彼の心に巣喰う「狐」の仕業である。そして「狐」の存在を知らぬ人間には、「狐」と闘いながら暮らしている人間の足跡はたどり切れない。 この秋成の…

たとえば「日本語」について

江藤はこう書く。 「それは、現在までのところ、沖縄方言以外に証明可能な同族語を持たぬとされている特異な孤立言語であり、時代によって、あるいは外来文化の影響をうけてかなりの変化を蒙って来てはいるが、なお一貫した連続性を保って来たものである。し…

たとえば、近松、

近松の『傾城反魂香』をとおして、あるいは、「道行」という表現の形式をとおして、熊野比丘尼が語られ、熊野比丘尼が歌う「相の山」が語られ、熊野信仰が語られ、「信徳丸」の乙姫の道行きが語られ、「日本書紀」の影媛の嘆きの歌が語られ、そして江藤淳は…

 江藤淳は『日本文学史』の年表を見て驚いた。

それは、 「慶長5年(1600)を截然たる境として、日本の文学史がほぼ三十年間、見方によってはその倍に当る六十年間、文字通りの空白に帰してしまっている」 ということによる驚き。この空白の意味するところとは、 関ヶ原の戦役を境に、 「奈良・平安…

近松の「百合若大臣」は……

幸若舞・説経の「百合若大臣」に説経「信太妻」の趣向が入り混じり、やけに面白い。主役は筑紫の和田丸。今日の都の田村丸と並び立つ英雄。 「今度蒙古裡国の蝦夷起つて。新羅百済を攻め動かし直に日本と刧さんと賊船七百艘。対馬の沖に来る由日夜の注進頻り…

八王子城跡近くの石仏群は観音様ばかり

どおおおおおっと風吹く日に、八王子城跡あたりをうろうろ。寒かった。 八王子城の城山のふもとに観音堂がある。その脇の木立の中のあちらこちらに石の観音像、千手観音、十一面観音、千手十一面観音と。 これは西国33か所、坂東33か所、秩父34か所の…

著者のあとがきから。

「なかでもわたしにとってもっとも興味深かったのは、日本に多大な影響を与えた朱子学とその基礎にある易の思想であった。朱子学を中心とする中国哲学から私が手に入れたひとつのアイデアは、人間をその内面から捉えるのではなく、身体の置かれた空間とのか…

 「わたしたちはいったいこの国の国土と風景に何をしてきたのか」

と、著者は、『西行の風景』を締めるにあたって、書いている。「この国の国土と風景」という時、著者は、西行が壮大な意図を持って、和歌をとおして作り上げた神仏習合の思想の上に生れいずる風景を言っている。 しかし、西行って、こんな人だったとは全く知…

 昭和のごくはじめまで、北関東の農村地帯では、

所により村の神社で縁日に風呂を湧かし、近在の農家の人々に湯を振舞う風習があった。境内には戸板を並べて駄菓子などを売る店が出て<御神湯>の幟が立ち、湯殿と並んで社務所には浪曲の一座がかかった。 一座といっても親娘三人位で、母親の三味線に父親が…

白山修験と平家物語と時宗

平家物語、倶利伽羅峠合戦。この模様を伝えたのは、白山修験の徒。 砺波、倶利伽羅峠周辺を徘徊した修験山伏は、白山神の霊験功徳を唱導し、倶利伽羅峠の谷底に馬もろとも生き埋めになった平家の大軍の悲惨な死にざまを口寄せで繰り返すことにより、惨死した…

従軍僧は語る。

『平家物語』『太平記』『義経記』『明徳記』『結城戦場物語』『大塔物語』等の軍記物には時衆関係の記事が多い。 それは時衆が従軍僧として戦場に赴き、実戦の模様をつぶさに観察した結果。いくさ語りする時衆。

 軍記物語と時宗

「惣じて時衆の僧、昔より和歌を専とし、金瘡の療治を事とす。之に依りて御陣の先へも召連れ、金瘡も療治し、又死骸を治め、或は最期の十念をも受け給ひけるほどに、何れの大将も同道ありて、賞玩あるとぞ聞えし」『異本小田原記』より。

記憶の森を前にして。

2017年2月4日。「さまよい安寿原画展」のクロージングイベント「旅するカタリ その2」では、単に語り手が朗読したり、祭文語りが説経祭文を演じるだけでなく、そこに集う人々とともに「物語の場」を開くというささやかな試みをした。まず私たちは、画家屋敷…

 島々の教え  〜けえらんねえら 唄いじょうら!〜

現代詩手帖に寄稿しました。

 めぐる旅は水の呼び声

「八百比丘尼」伝説を追った旅のエッセイです。

 「云々」なんか読めなくても、基本的にでんでん構わないです。

漢字なんか読めなくても、そもそも文字を学ぶ機会も環境も持ち得ずに大人になっても、地べたを這うようにして必死に生き抜くことでみずからを磨き上げてきた畏敬すべき知恵深い人々がこの世の中には沢山いらっしゃいますし。 たとえば、沖縄最後のお座敷芸者…

 胸に刺さっている言葉ひとつ。

「だって、あなた、社会派じゃない、社会問題を追いかけてるじゃない。あたしはそうじゃないから」昨年末のことでしたが、長い付き合いのある人にさらりとこう言われたときに、どうしようもない違和感と悲しみが瞬時に心に湧きおこったのでした。 これにかぎ…

 禅の中のバサラ、というのは意外なタイトルだな、と『中世芸能講義』を読む。

★禅と芸能と言えば、一休さん 後小松天皇の子。禅僧。ここに芸能者が集まる。金春禅竹、宗祇の弟子の有名な連歌師柴屋軒宗長、山崎宗鑑(連歌師)、村田珠光(侘び茶の祖)……。これを「一休文化圏」という。by 松岡心平。 ★中国の禅文化の流入 13世紀中頃…

 哲学は今日、音楽の改革としてのみ生じうる。

ムーサが歌い、人間に歌を与えるのは、言葉を語る存在がみずからの死活にかかわる住まいにしてきた言語を完全に自分のものにすることができないでいることをムーサが象徴しているからである。 音楽が存在していて、人間がたんに言葉を語るだけにとどまってい…

花の下連歌の無縁性と脱構築性

そこは社会から断ち切られた特別な場。無縁の自由空間。そこは冥界に通じる超越的な場でもある。 つまりは、境界的な場。無縁平等な人間集団の場。それは「一揆」というきわめて中世的な人間結合の現象につながってゆく。一揆とは、一味神水という神前の儀式…

花の下連歌とは、花鎮めなのであるということ

13世紀中頃、1240年代に一般大衆が参加する言語ゲームの場が、法勝寺や毘沙門堂といったお寺の枝垂れ桜の下に開かれた。熱狂すればするほど神さまが喜ぶ、熱狂すればするほど意に満たずして死んでいった怨霊たちの心が慰められる。花見は静かにやるも…

 連歌的想像力、つまり批評精神が大事ということ

連歌は瞬間的な世界変換、あるいは脱構築の連鎖によって成立する多声的で未完結の開かれた体系である。和歌が一つの世界に没入するものとするならば、連歌は常に相手の言っていることを理解したうえで、別の世界をどのように自分にぶつけていくかが問われる…

12月30日 『大松明まるき』(斎館、庭上)

以下、宿坊多聞館のHPより。各町の若者の代表が羽黒山山頂に上り、悪鬼・邪悪の象徴とされるツツガムシを模った大松明を作り上げる。斎館で松聖によるお祓いを受けた若者達は大松明の材料となる綱・網・簾などを斎館から山頂まで担ぎ上げる。担ぎ上げた材料…