2018-09-19から1日間の記事一覧

石牟礼道子『苦海浄土』 第六章とんとん村 より。 足尾への眼差し。

「すこしもこなれない日本資本主義とやらをなんとなくのみくだす。わが下層細民たちの、心の底にある唄をのみくだす。それから、故郷を。 それはごつごつ咽喉にひっかかる。それから、足尾鉱毒事件について調べだす。谷中村農民のひとり、ひとりの最期につい…

「治水は造るものにあらず」と正造は言った。そこには渡良瀬川をはじめとする利根川水系全体を歩きたおして体得した「水と自然の思想」がある。日本の近代はこれを否定することからはじまったのだ。

正造の治水行脚。 齢70にして、1910年8月10日から1911年1月30日までに、少なくとも1800キロ以上歩いている。 それは本州縦断の距離に等しい。 これは、明治政府の治水政策の誤りを実証するための行脚だった。この情熱、執念。生きとし生ける命のための。 「…