「舟に船頭」 本調子


舟に船頭ささやいて
今朝の出潮に首ったけ
惚れて通えば
千里も一里ぢゃえ


新年会の発表曲の一つ。微妙な節回しに悩むなァ。


柳橋あたりの芸者といなせな船頭とのはかない逢瀬を歌ったものらしい。「江戸小唄」改訂増補版 1981 木村菊太郎)

cf)

逢うて戻ればアア千里が一里 
えい 逢わで戻れば憂や辛や(『浅野藩船歌』中『道頓堀』)


君を待つ夜は一夜が千歳 逢うて帰れば千里も一里(『春遊興』)


芸者と船頭の色事は御法度というのを、人目を忍んで夜更けになじみの芸者との逢瀬を果たして、朝靄の中を岸につないだ自分の船に帰りついた船頭を歌ったものと木村は想像する。

首ったけになるほど潮が満ちているということと、首ったけに惚れるをかけている。