脱出

昨日、単行本原稿の最終稿4百枚弱を編集者にようやく送る。刊行は6月中旬に。ゲラが出るまで束の間のんびり。
小島信夫「別れる理由」全三冊をはまって読むつもり。
現在、4・3事件体験者のお話を聞き取り中であるゆえ、済州島関係も集中して読む心積もり。金石範の大河小説「火山島」も読破しようと思いつつ、やや足踏み状態。
ハンセン病関係もこれからあらためての資料読み。5月上旬に鹿児島の星塚敬愛園で行なわれるハンセン病市民学会の集会に参加するにあたっての下準備。石垣島出身のハンセン病回復者のおばあちゃんと温泉で時間を過ごしていろいろお話を聴くことになっていて、それが楽しみ。


書くことを、読むことをめぐって、思うこと。
書く、直接的なメッセージの言葉を記すことなく、描かれた世界の空気のなかにそこはかとなくメッセージを漂わせる。
いや、メッセージと言ってしまうと何か違う……、
ある世界の、なにごとかの存在感みたいなもの、空気そのもの、かな……、
その空気を呼吸しているうちに、細胞までその空気がしみこんでいって、気がついたから、細胞単位で読み手が変容していく、そういうDr.ナントカの密かな陰謀のような本が私の理想。
そういう本をたくさん読んでたくさん変容させられたいと思う、
「こっそり私を変えて」
未知の本に出会うたびに、本にそう囁きかける。あからさまなメッセージ、見え見えの企みのような無粋はやめてね、と。
しかし、自分が書くとなると、なかなか無粋を拭いきれないから厄介。
今回の本の裏テーマは「脱・無粋」。さて、無粋からの脱出は成功したのか否か……。