不運な女

『不運な女』というのは、大好きなブローティガンの最後の小説のタイトル。ブローティガンが自殺したあとに遺品の中から発見された遺稿。
私はこの小説を去年の6月1日に熊本の橙書店で買って、翌日、6月2日に読み始めて、腰を抜かしてしまったのだけど、というのも、読み始めたら、14ページ目で「今日はわたしの誕生日」とブローティガンはいきなり脈絡なく書いて、(もともとこの人の小説には、いわゆる脈絡はない)、15ページ目に「今日はわたしの誕生日です。四十七歳になりましたよ」と重ねて書いて、16ページ目までに、あと二回誕生日を連呼して、最後に「もう四十六歳になることはない、それだけはわかっている」と慎ましく書くのだけど、ちょうどその日はわたしの誕生日で、(つまり今日もわたしの誕生日)、そのことを死せるブローティガンに教えられ、しかも何歳になったのかまでお節介にも教えてくれて、そしてそれゆえ去年から、ブローティガンのせいで、わたしの誕生日と「不運な女」は分かちがたく結びついてしまって、運がいいのか悪いのかわからぬような、迷惑だけど嬉しいような気分になっている。
ブローティガン、好きなんだなぁ……。
また一つ、歳を取ってしまったなぁ……。
メメントモリメメントモリ……。