戦闘開始

明日3日より、五日連続の文芸創作集中講義。これで5回目となる。毎回学生の顔ぶれは変わり、毎回教室の空気も異なり、そのなかで、学生ひとりひとりに真正面から向き合う体力気力勝負の講義。彼らに対して文章作法といったハウツーめいたことは一切語らない。本気で書く気になりゃ、書き方なんぞは自分で見つけ出すものだから、その「本気」で書くということの出発点に立とうとしている若者たちの後押しをする、といったことだけをする。それにしたって、全身で表現に立ち向かえ、くらいのことは普通に学生に要求するから、要求する以上は私も全身全霊で学生たちに立ち向かうわけで、それを考えると講義前夜の今から既にクラクラヘロヘロしつつある。

村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」を再読。
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」という言葉から始まる冒頭の数ページは、書くことに対する若い語り手(村上春樹)の苦い希望が書かれている。それはどんなに苦くても手放せない希望。ここから村上春樹は出発したんだとあらためてしみじみ思う。
「夜中の3時に寝静まった台所の冷蔵庫を漁るような人間には、それだけの文章しか書くことはできない。それが僕だ」

さあ、明日、恵泉女学園大学で1対12の戦闘開始!