ハンセン病がらみの新聞連載原稿に呻吟。気を抜くと、すぐに青臭いことを書くおのれの書生気質に少々手を焼く。
ジャン・アメリーは書く。「つまり、どこでもみかける平凡な顔が最後にはゲシュタポの顔になるということ。悪がいかに凡庸さを高めるものか。哲学者のハンナ・アレントはアイヒマン裁判を語った本のなかで「凡庸な悪」について書いているが、彼女は情報によって悪を知った。防弾用のガラスケースに保護された悪を見ただけである」。ジャン・アメリーは、ベルギーでレジスタンスに参加して逮捕され、激しい拷問を受け、アウシュビッツに送られた。戦後生還。その20年後に自らの体験を書き始め、後に自殺。
秋旅エッセイに、友人の版画家山福朱実が挿画をつけてくれた。骨太で繊細で幻想的（妄想的？）な日本海の眺め。この山福的日本海は、東京新聞11月2日夕刊に載る。
熊野のそばの十津川から友人がやってくる。我が家泊。この友人は、ある時期、わが娘を母親代わりになって面倒を見てくれた人。この友人のことを娘は敬愛の念を込めて「名誉母」と呼ぶ。
