集中講義も終り、睡眠不足も少しずつ取り戻し、日常業務に戻りつつある。資料の散乱した部屋を片付け、雑誌原稿のゲラを戻し、ぶつぶつと途切れがちな翻訳の仕事にも取り掛かり……。
秋学期集中講義中に2009年度春学期の文芸創作クラスの作品集が完成した。8月から足かけ4ヶ月、ひとりひとりとやり取りを重ねた末の、12人12色の作品が収められている。学校作文教育の賜物としか言いようのない優等生作文や、どっかで読んだような文体や形式をなぞった作文からスタートして、ようやくここまできたと思うと感慨深い。誰もが最初は借り物の言葉、借り物の定型から出発する。借りて書いていると、最初のうちは楽しい、すらすら書けるような気もする、でも、すらすらと借り物に寄りかかるほどに、文章のリアリティが消えていく、その落とし穴にいかに気がつき、穴の底からいかに這い上がってくるか。うまい文章が必ずしも心に沁みる文章ではない、テクニックに心が追いつかない、そのズレをどう乗り越えるのか。
学生ひとりひとりが、表現に向かう上での自分なりの課題を発見し、自問自答を繰り返しつつ、書くことに取り組んだその結実としての作品集がある。自分の言葉、自分の息遣いで書くということの、最初の確かな手ごたえを刻み込んだ作品集。表現のはじまりの場所から生まれた若々しい作品集。彼ら学生たちに向き合うたびに、私もはじまりの場所に引き戻されてゆく。
さて、秋学期集中が終われば、すぐに、3月末の完成をめざして、秋学期受講生の作品集作りがはじまる。思えば、一年の大半を、文芸創作クラスの作品集作りに関わりつつ過ごしている。
今日はクリスマスイブ。ちかしい人々とシャンパンで乾杯。