出航

横浜で年越し。
12時ジャストに港に鳴り響く汽笛を聴き、遠くで弾け散る爆竹の音を聴き、ランドマークを照らす花火の光を見た。四半世紀前、自分にとっては節目の年の新年を汽笛を聴きながら横浜で迎えて以来のこと。今年はきっと節目の年だから、もう一度はじまりの場所に立つような気持ちで、横浜。次の四半世紀に向けて出航…。どんな時を過ごすことになるのだろう。

『人種主義の歴史』(みすず書房 ジョージ・M・フレドリクソン 訳:李孝徳)。訳者解説「―日本の人種主義を見すえて」は、本文には欠けている(欧米の研究者が見落としている)、アジアにおける人種主義を語る視点を提示する。

古本屋で買った「文章読本」(中村真一郎 新潮文庫)。面白い。名文家芥川龍之介は、口語文(言文一致文)を書くより、文語を書くほうが遥かに楽だったのだという。文語文なら、心の中から自然に流れ出てきたので、ほとんど語の配列を考えるという手数を必要とせず、かえって口語で小説を書く場合は、まず下書きを作り、それに苦心して仕上げをしていたらしい。文語から口語への翻訳。いつの世も、ありものの言葉を新たな自分の言葉に書き換えてゆく「翻訳」によって、新しい表現、新しい文体は生まれくるのだろう。