金時鐘詩集『失くした季節』の言葉を拾い読む。八十歳の詩人の疾風怒濤の言葉。
テロも行き会えないから
人だけが ただ死ぬ。
せめてすれ違えたなら
俺こそが テロリストだ。 (金時鐘「蒼いテロリスト」第一連)
言葉がそこらで降り敷いています。
耳をそばだてて
ぼくがいます。
空の芯ではじけている
何かがたしかにあるのです。
変われないぼくを
愛してください。 (金時鐘「蒼い空の芯で」最終連)
人はつながる。
縁故とつながり 仕事につながり
世俗と解け合って 大衆になる。
イブがいちじくとつながったおかげで
そこらでしきりと ときめいた胸が出会ってゆく
しなびた手と手が
坂の途中でほっそりつながる。
こともなく誰もがつながり
つながる誰も
そこにはいない。(金時鐘「つながる」第三連、第五連)
作家金石範は、詩人金時鐘を評してこう言う。「時鐘の詩は意志だ。意志は必ず論理性を持っている。構想的な力です」「抒情を拒否する力は意志であり、日本語の花鳥風月的な抒情に身をさらしながら、いわば分裂した状態で、創造的な使い方をしたんだな」「金達寿氏は、日本の読者にわかってもらうために日本語で書くという言い方をしているが、言葉って、文学はそんな方便的なものではない」「抒情を越えた、肉体としての言語の力」「抽象性はあるが、観念的ではない。自然主義でもない。完全に彼の肉体である。そういう日本語が創られた。単に言葉の問題ではない。金時鐘の文体の拠って立つところは思想なんだ。その文体が思想を生むのか、思想から文学が出てくるのか。その底に意志があり、論理がある。思想詩人といわれる所以」。(『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか』より)
「思念の奥の言葉の紡ぎをやりたい。(……)「四・三」の、ぼくの深奥なる一番奥底の、凝り固まった敗残の己のうずきを、悶えを、それを言葉化したいねん」(金時鐘)
ここまでメモしてきて、ふっとBGMに耳を澄ます。Fishmans。
MUSIC
COM' ON ROCKERS!
COM' ON ROCKERS!
あと2時間だけ夢を見させて
夢を見るのも、だんだんと難しくなってくる。
切実に声を届けたい人ほど、一向に届きそうにないのは、どうしたことかと、脈絡もなくふと思う。