軽くない

この半月、ひたすら、この夏の済州島の旅をたどりなおす原稿書きの日々。集中して、旅をしていたあの時に自分を引き戻す。ほとんど引きこもって、二週間で新聞連載のための原稿九本、あと六〜七本で完結かな。それにしても、ちょっと疲れてきました……。少し潤いが欲しいような気もしてきました。カミサマ、どうか、、あんなこととか、こんなこととか、いろいろよろしくお願いします。

原稿の合間に、先に解説を読んで感動して、あとから本文を読むという流れで、絲山秋子の『イッツ・オンリー・トーク』を読む。解説を書いたのは、絲山秋子の小説を世界の誰よりも愛する書店員さん。絲山秋子も書店員さんも、ワン・アンド・オンリーなトークで、小説っていいな、と久しぶりに素直にしみじみ読書の快楽。

今日読んだ詩。


『軽く書く』 ムン・ムビョン

今は軽く書く
血の色を消して ピンクの愛で軽く書く
なきがらたちは菜の花畑に埋めておき 黄色に染めて書く


菜の花は血にぬれ、石塀に投げつけられて死んだ子と
こどもの墓の前で鳴いていたカラスの四・三の野原は
絶対に忘れなければと思い、軽く軽く書く


政府米の配給に涙まじりのあの日のハルモニの
厳しい冬はこれ以上語ってはならない、
腹がへって狂ったあの日のハラボジが
腐った馬にわいたウジを拾って食った、
恥ずかしい話は絶対に忘れなければと思い
漢拏山をみつめる