芯から震えろ

慌ただしく過ごしていたら、7月になってしまった。
5月下旬から6月末まで、怒涛のようだった。

石牟礼道子さんを訪ねて、お話を伺ったのが5月の下旬。それは6月29日発行の週刊読書人に見開き2ページで掲載されている。久しぶりに石牟礼さんにお目にかかって、すさまじく緊張した2時間だったが、何か大切なものを受け取った。これから書いて生きていくうえで。石牟礼さんは、死者たちとともに生きて、死者たちとともに祈り、死者たちの言葉をこの世に伝えおこうとしている。その覚悟に触れたように感じている。


6月、これまたすさまじく緊張する2時間を過ごしたのが、今福龍太さんとの、池袋ジュンク堂での対談。3・11以降に生きる、ということを踏まえて、「<震え>の思想、<震え>の詩」というテーマで、語り合った。「対話は三声で行われる」というエドモン・ジャベスの言葉を引いて、私と今福さんとの間にもう一つ椅子を置いて、そこに目には見えない方々をお招きすることとして、私も今福さんも椅子の方にもバラを一本。植物は中空をさまよいがちな私たちひとりひとりの神を私たちの頭(チヂ、あるいはツムジ)に呼び戻すための宿り木。あまりに緊張して自分が何を話したのか、今福さんが何を語ったのか……。光について、記憶について、空白について、待ち続けるということについて、震えについて、語り合ったように思う。


私たちはただ単に外から揺さぶられただけではないのか、それを自分の内側から震えたとただ勘違いしているのではないか。生きようとするならば、芯から震えろ。


6月はもう一つ、緊張の2時間、あっちこっち出かけては、(出かけなくとも)、やたらと歌いつづけて数十年(?)の思わぬご褒美のような2時間でもある。TBSで年末恒例の音楽ドキュメンタリー『クリスマスの約束』の主人公である小田和正さんにインタビューをした。緊張しすぎたインタビュアーがなにかとしゃべりすぎるという困った(?)インタビュー。「歌うことはつながること」。小田さんの歌に向かう姿勢はおそらくそう言い切ってもいいのだろうと思っているのだが、そのあたりを、その姿勢が如実に表れている『クリスマスの約束』を話題の中心として、お話を伺った。このインタビューは、平凡社の雑誌『こころ』の次号(8月刊)に掲載される。ああ、しかし、緊張した……。


いま、ひそかに動き出しているたくらみが、長距離走中距離走短距離走合わせて5つほど。すべてに共通するキイワードは、声、語り、つながり、はじまり。

一番近いところでは、8月25日、馬喰町のART+EATにて、『はじまれ 犀の角問わず語り』刊行記念の語りの会を催す。
ART+EAtはこんなに素敵なところ!  http://www.art-eat.com/    詳細はまたいずれ。

この夏は、たぶん、休む間なし。この夏は、芯から震える。