ハンナ・アーレント『全体主義の起源』最終段落。


 しかしまた、歴史におけるすべての終りは必然的に新しい始まりを内含するという真理も残る。この始まりは約束であり、終りがもたらし得る唯一の<メッセージ>なのである。始まりは、それが歴史的事件になってしまわぬうちは、人間の最高の能力なのだ。政治的には始まりは人間の自由と同一のものである。≪Intium ut esset homo creatus est.≫――「始まりが為されんために人間は創られた」とアウグスティヌスは言った。この始まりは一人々々の人間の誕生ということによって保障されている。始まりとは実は一人々々の人間なのだ。