残傷の音


『残傷の音』(李静和編 岩波書店 2009)を読もうとして、
その前にまず付録のDVDを見た。
「アジア・政治・アート」プロジェクトに参加した7人のアーティストの
パーフォーマンス、あるいは自作を語る映像。

声にならないもの、言葉にならないもの、記憶の形をとっていないものを
でも、確かにそこに在る何かを、
ある、ひとつの、動き、あるいは音、かたまり、違和、異化、震えとして
差し出す。

いきなり差し出されたら、うろたえる、途方に暮れる、頭ではない、身体がそれを受け止めようと
細胞が騒ぎはじめる。

琴仙姫作品「残傷の音」。
丸木位里・俊の沖縄戦の図に、したたる、流れる、寄せては返す水の音、
水に溶け込んでいる得体のしれないものが、ぽたぽたと皮膚に落ちてきて、
身体にじわじわとしみいって、それが恐ろしい。体の内側を蝕むほどに恐ろしい。

ぱちぱちとなにかがはぜて燃える火の音もしたのだけど、やはり水が恐ろしい。
雨のようにふりそそぐ水が恐ろしい、

そのうち、沖縄戦の図に覆いかぶさるように降り注ぐ人の声。

詩を読む声。中屋幸吉の詩。


「 最後のノート」 中屋幸吉


アメガフッテル アメガフッテル
... トオオク トオオク ニモ フッテル
チイサイ チイサイ イノチノウエニモ
アメハ ヤッパリ フッテイル
イシモ ヌレテイル
ソラモ
ユビノサキモ ヌレテイル
ドウシヨウモナク イタシカタナク
ヌレテユク
イマ
カナシイトモ オモワナイ
タダ
ミョウナ 深ミ
エジプトノ ピラミッドノ
アノ中ノ石棺ノ
ワビシサガ
ナントモ ジブンノ モノノヨウダ
ああ あめ あめ あめ
あめふうり
あめふうり
茶店
みんな おちてくる人だ
闘ウヤツハ 闘エバイイ
生キルイガイニ能ノナイ奴ハ
ヤッパリ ノコノコシテテイイ
モウ ダレニモ 会イタクナイ
イキテル 奴ハ
ボクト カンケイナイヨ
キミハ
ソッチカラ オレヲナガメ
オレハ
コッチガワカラ
キミタチヲ ミテイル
今日 エイガ ミタ
小林旭
ボクトシテハ
ヒトガ 殺サレ シンデイク
シュンカンノ描写ガ
オモシロカッタ
エイガデハ
ミンナ タノシソウニ
コウフク ソウニ
シンデイク
ダガ ジッサイハ
殺スノモ 死ヌノモ ムツカシイ
カコクナ イシガ イル