そういえば、奄美にも百合若伝説。

島尾敏雄『東北と奄美の昔ばなし』に収められた「奄美のユリワカ」。

奄美のユリワカの名前の由来は以下のとおり。

子供のない夫婦が国中のオミヤに子宝をお願いして歩いた末に、オミヤのボウサン(奄美では神仏混淆)に、オミヤの先の、たきの上のユリのえ花を寝床に敷いて寝れば子は生まれると教えられた。そこに行くと、6月(旧暦)なのに、ユリの花が一輪だけ咲いていた。それを敷いて寝たら、子供が生まれた。ボウサンがユリワカという名前を付けてくれ、すくすくと育った。



『百合若大臣』のように、手下に騙されて島に置き去りにされる話も、百合若を助けようとした愛鷹緑丸が力尽きて死んでしまう話も、「奄美のユリワカ」には出てくる。


奄美のユリワカでは、死んで海に落ちた鷹にウジがたかって、そのウジが魚に変化して、その魚を追ってきた漁師の船にユリワカは救い出される。


ようよう生まれ島に戻ったユリワカは、トゥジ(=妻)のもとに戻っていくが、妻はあまりに変わり果てたユリワカを一目では見分けられず、さんざんやりとりがあった末に、ユリワカの証である体の痣を見て、驚いてひっくり返って、打ち所が悪くて死んでしまう。


ユリワカのことを見忘れていた妻は死んだけど、一目でユリワカだと悟ったうまやの愛馬2匹は前足を高くあげていなないて、ユリワカは余生をこの馬2匹といっしょに過ごしたんだとさ。


人間に裏切られ、妻には見忘れられ、一方鷹に命がけで助けられ、馬に愛された奄美のユリワカのお話。