姜信子『はじまりはじまりはじまり』(羽鳥書店)より。
https://www.youtube.com/watch?v=YI_nj8qwNkQ&list=PL2f7XMQZC6CgNZ6hmzhX6EbQHW6nhwqFS
この詩を版画家の山福朱実さんが歌ってくれることの、このうえないよろこび。
歌:山福朱実 曲・演奏:末森樹
とおいむかしの だいこうずい
はるかな みなみより
船がひとつ ゆらりゆらり
きおくと よかんを のせて
あたらしい 生の渚のゆめをみた
それがね ようようたどりついた
暁の汀(なぎさ)に ひとがとんだ彈みに
ぱらぽろろ
もじが こぼれて きえてしまってね
にんげんの來(こ)しかたも 行くすへも
ほどけてしまってね
あいあいおお ひとは聲をあげて
きおくを よびあつめた
おいおいああ 谺(こだま)は祈りとなって
命と命を結んだ やがて
かぜにゆれる艸(くさ)や梢の緑のやうに
ふるふる うたがうまれた
そうして ひとは くりかえし
生き變ってきたと
古(いにし)への 彷徨いびとのおしへ
ほら いまも ここに 祕やかに
はじまりのうた きこえる 聽こえる