旅の写真帖   瀬田の唐橋〜摺針峠

雨に打たれて、6月というのに、鳥肌を立てつつ、瀬田の唐橋から琵琶湖を臨む。
生まれて初めて琵琶湖を見た。確かに大きい、海みたいだ、大きな琵琶みたいだ、いまにも歌いだしそうだ、

山は三つの頂があるから三上山、別名ムカデ山。山にまきついて人々に祟りなす大ムカデを俵藤太が退治したんだと。


瀬田の唐橋から中山道の愛知川宿に入る途上、鏡神社に立ち寄る。ここは義経元服の地なのだと案内にある。古浄瑠璃「源氏烏帽子折」の世界。まだまだ雨は降る、風景がみな濡れて滴っている。「源氏烏帽子折」には、烏帽子屋の娘が、義経に、こんな烏帽子がある、あんな烏帽子があると、とっかえひっかえ、烏帽子のファッションショーをする場面があるのだが、そこのところは人形浄瑠璃では上演されないのだそうだ。いろいろ烏帽子を見せながら、実のところは、どう? 私、いけてる? かわいいでしょ? お気に召して? という場面で、義経と娘はねんごろになる。その後、この娘は、「ひらかな盛衰記」の巴御前のような、獅子奮迅の働きをするという。


さて、
中山道 第65番の宿 愛知川(えちがわ)
 



旧道をゆく。かつて旅人たちが無賃で渡って良しとされた無賃橋を渡る、左に新幹線、右に高速。この道だけは、とろとろゆっくりと、千樹寺は江州音頭発祥の寺
 


 


中山道 第64番の宿 高宮。多賀大社門前町。まだ雨はやまない。人気もない。


雨で店も早じまい。 参道の商店の軒下には、笑門の絵馬。 毎年、商店会で作りかえて掛け替えるのだそうな。多賀書房のおばさんが教えてくれた。



多賀大社への道筋の小野町には小町前茶屋。小町塚の脇にある。
 



この先、中山道随一の眺望、琵琶湖と叡山を見渡せる「摺針(すりはり)峠」へ。
弘法大師伝説あり。
この峠を、説経「小栗判官」では、照手姫が餓鬼阿弥の土車を引いて越えた。
ここには、あまりの眺めの良さに、明治天皇も、朝鮮通信使も、足を止めた。