「詐欺師」は『群像』1973年12月号に発表。

主人公の白東基は、まるで阿Qのようだ。
魯迅の影をよぎる。

ケチな詐欺をしたがゆえに、共匪(北のスパイ)の主謀者にでっち上げられた男が、すべての希望を断たれたことが分かった瞬間に、おれは共匪だ、主謀者だと、そう名乗りをあげることで、小さかった自分が、立派に男らしく生きている実感を味わう、そして夢想の中で死んでゆく。


そういえば、「夜」には、カミュの「異邦人」の影がよぎってたいたような気もする。