天草四郎と切支丹の若き武士蜷川右近の会話

四郎「この世は今もって、大いなる混沌でござります」

右近「さっき虚空と言われたが」

四郎「はい。底なしの空ろというべきか」

右近「して、そこから世界は生まれ直すと思わるるや」

四郎「万物を生み、滅ぼす仕かけが、そこにあるやもしれませぬ」

右近「ならば、デウス様はいらぬと」

四郎「いえ、世界の秩序を観照するお方がいますゆえんは、そこにあるかと考えておりまする。人はみな、世界の諸相を身に受けて、くるりくるりと反転しておるばかりかもしれませぬ」