さんそう太夫登場 ~ あんじゅが姫の試練〜

「太鼓三味線の音がする/あれの音ではないかと/急いで行て見れば/丹後の国の奥の山で/さんそう太夫が先ぎだちして/天の明神様弟のふりやいが悪い為に/石のから戸に身体をおかくれ致した時分に/さんそう太夫が太鼓三味線で/つゆのお神楽あげでら音でありました」

※さんそう太夫とのこの出会い方は実に面白い。神楽をあげるさんそう太夫。しかも三味線。ここには座頭の三味線の響きが入り込んでいるのだろうか。あるいは坂口昌明が言うように、大津絵の「三味線弾く鬼」のイメージがまぎれこんでいるのだろうか。


あんじゅが姫は、このさんそう太夫に雇われて、無理難題を吹きかけられて、
「出来ないとすれば/蒲をたいで逆さねつるして/火あぶりに責められる」

※語り手のあんじゅが姫はまだ3歳ですからね。実質、土から出てきたばかりで、新生児に等しいからですね。

●試練の数々は以下の通り

1.粟も米も搗けないと、火あぶりで責められる。
2.両手の指ぜんぶから血を流すほどに急いで空豆の皮を剥いてしまえと責められる。
3.向こうの山から石と土を背負いだして、七日のうちに七つの竈を仕上げろと責められる。
4.目の粗い籠で水を汲めと責められる。
5.爪で葭を十本切ってこいと責められる。
6.七つの釜火を焚いて、裸で裸足で渡れと責められる。


※ これは、釜茹での準備をあんじゅが姫本人にさせるという、「注文の多い料理店」状態? はたまた「ヘンゼルとグレーテル」状態?

「人間だぢや」
※試練に耐えるあんじゅが姫/イタコは既に神の声で人間たちに呼びかけはじめている。


●三才のあんじゅがひめの嘆き

「どうしてわが姿で/石負り土負り致したら/死んでしまるべゃね」
「これに水がはるものだべがと思れば/涙が湧いで来る」
「世間の人は/百になても死にたぐないこの身体/母とあへて死んだらのごろぐないが」