海の民タオの祈り。タオの作家シャマン・ラポガンの文学それ自体が祈りなのだ。歌なのだ。


亡くなった子のための祈り

「子どもよ、気を付けておまえの道を歩いて行くのだよ」

「願わくば我らの膝から生まれた長女をお受け取りください
 この娘のお蔭で我らは祖父母となりました
 娘を導いて白い島へお連れください
 願わくば我らをシロカモメのような善霊にしてください」


●タタラ(舟)をつくるために木を伐る斧にかける言葉

「おまえはわしじゃ わしはおまえじゃ」


●タタラとなるパンノキに向けて

「わが親愛なる木の魂よ、わしはおまえを舟板に迎える。おまえはわしといっしょに海で漁をするために働くのじゃ。風や波浪に乗って進む練習を重ね、海洋民族のトビウオ漁文化を実践し、大型魚が泳ぐ海域を追い、こうして我々は先祖伝来の黄金財産の祝福のもとに一体となるのだ」



●海の魚に向けて

力いっぱいのみ込むのだ! わが敬愛する大きな魚たちよ
わしはおまえたち霊魂の友だ
飛んできてわが家の客となれ
黄金の霊魂がおまえたちを迎えよう
わが敬愛する大きな魚たちよ


トビウオの民であるタオにとって特別な魚であるロウニンアジに向けて、海の民は即興で歌詞を創り、歌をうたう。

エイ〜 アニトの貪欲な舌は 大きな魚が泳ぐ道だ
サア〜 おまえたちが泳ぐ道で 霊魂のあるわが舟をみつけよ
オオ〜 わしはもう人の祖父となった……老人だ
アア〜 わしと同じような歳の大きな魚よ わしはおまえたちのために歌う


そうだ、歌は、このようにして歌われるのだ。

わしはおまえたちのために歌う