かもめ組 小史! (神戸・凱風館公演前にちょこっとまとめときます。昔のことより、ここ10年のことのほうが不確かな年頃になっちまったもんで……)

まずは久しぶりに神戸に集合のかもめ組。かもめ組としては初神戸です。もうチケットは完売です。

テーマは「乱場(ナンジャン)」でござる。

声の力でカオスを呼んで、世界の再生の場を開く、という、壮大なテーマですな、これは。

 

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さかのぼれば、7年前、はじまりは、これだったのです。

2012年10月7日 

かもめ組 新潟・万代橋 旧水揚げ場の仮設野外劇場「かもめシアター」にて出帆!

新潟で、列島の語り芸「浪曲」、半島の語り芸「パンソリ」が出会い、結び合うことの意味をわれらはもちろん考えておりましたよ。

でも、芸能は、芸能そのもので、声で、五感で、六感で、響き合うものでして、

野暮な言葉は発しません。

 

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この日、新潟市主催の水と土の芸術祭のプログラムの一つ、「浪曲からパンソリへ、パンソリから浪曲へ」に、浪曲玉川奈々福 曲師沢村豊子 パンソリ:安聖民 鼓手趙倫子 道案内人:姜信子 の三組が初めて同じ舞台に立ち、公演終了時に「かもめ組」誕生が宣言されたのでした。

このときは二回公演。

水辺で語られた浪曲「金魚夢幻」 パンソリ「水宮歌」のあの響き合いは鮮明に記憶している。

「水宮歌」の虎先生登場の場面では、安聖民の背後にいきなり大きなトラ猫がのっそりと姿を現し、物語と現実が交差する瞬間が現出したのでありました(大げさだねぇ、この物言い)。

 

※この時のプロデューサー堀川久子とは、のちに<玉川奈々福(語り)×渡部八太夫(三味線)×堀川久子(舞)×姜信子(文)=やたがらす組>として「八百比丘尼の話」を東京・馬喰町ART&EATで上演することにもなる。

 

2013年2月9日(土) 

かもめ組として、東京にて初舞台浪曲からパンソリへ パンソリから浪曲へ」

昼の部 浅草・木馬亭  夜の部 馬喰町・ART&EAT
出演:玉川奈々福浪曲。曲師:沢村豊子  
   安聖民(アン・ソンミン)=パンソリ。コス(太鼓)*李昌燮(リチャンソプ) 
   道案内人=姜信子

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このときの、公演前の、玉川奈々福と安聖民のやりとりを、玉川奈々福facebookよりここに再掲。

 

奈々福:パンソリは節は決まっているのかな。浪曲は演者により全く違う。とはいえ、全く自由なのではなく、節には形があり段取りがある。だから師匠について修業してない人の節は一発でわかる。

聖民:節。うーん…演者によって違うというのは、同じ歌詞でも演者によって違う旋律で歌うということですか?

奈々福:そうです。同じ演題、同じ歌詞でも違う。でも、浪曲は、パンソリほど演題を共有していないので、テキストや演じかたも、演者ごとに違ったりしますけれど。まず、節付けのしかたが、演者ごとに違う。もちろん、師匠のまんまに演じる演者もいますが、浪曲の理想は、「自分の節」を作ることなので。

聖民:パンソリも、一流の演者になると、自分で師匠が歌っていた旋律とは違う節回しを作ります。私はまっだまだですが・・・。旋律の流れをパンソリではソリキルといいます。ソリは音or声、キルは道という意味です。ソリキルはある程度決まった型があります。そして、パンソリの場合はやはり伴奏が太鼓だということもあり、旋律もさることながら、リズムが大事です。

奈々福:ああ。なるほど。そんな話も、当日できるかしら。したいですね。浪曲の三味線は弦楽器であると同時に、打楽器でもあります。やはり、リズムです。

聖民:三味線ってそうですよね・・・。羨ましいです。ソリはKeyを保つのがとても難しいから・・・。パンソリは、節=テモク、啖呵=アニリといいますが、アニリで演じることに入り込んで興奮し、Keyが上がってしまうと次のテモクで死にそうになります・・・というか、その後の展開が・・・。上がってしまったKeyは落とせないので、自分で自分の首を絞めにかかるという・・・(涙)

奈々福:なるほど!音程支えてくれるものがないと、大変だ!

聖民浪曲は場面によって使う節に型はありますか?パンソリの場合は悲しい場面には界面調(ケミョンチョ:短調)の旋律、チニャンヂョ(18/8)やチュンモリ(12/4)のリズム…とだいたい決まっています。例外もありますが…。浪曲も節リズムに名前はついていますか?

奈々福:ついていますよ。外題付(冒頭の節)は、まず「きっかけ節」で始まります。それからリズムのある節、「関東節」「アイノコ節」「キザミ」……関東節の中にも「関東節の地節」「憂いの関東節」「阿部川町の節」などがありますし、アイノコ(浮かれ節)も演者によってバリエーションがあります。悲しい場面は、「愁嘆」「憂い」という節を使うことが多いですが、私たち関東節では「憂いの関東節」という、コードはメジャーだけれど、なんとなく憂いの漂う節を使います。風雲急をつげる場面では「セメ」。あと「言葉ゼメ」とか、いまはほとんど使う人のいない「説教」「四つ間」「観音」「勘違い」。また、演者独自に開発した「約節」などもあります。 安さん(18/8)とか、(12/4)とかがわからない。どういうリズムか、当日、教えてほしいなあ!

聖民:なるほど!節の名に数がたくさんあってびっくりしました。パンソリは曲調(いわゆるメジャー、マイナーの区別)が大きく羽調(ウヂョ:長調)、界面調(ケミョンチョ:短調)の分かれていて、細かい節回しには~モク(~喉)という名前がついています。これはたくさんあります。例えば、いわゆるビブラートは「トヌン モク(震える喉)」とか・・・。当日、少し例を挙げたりして観客の皆さんにご紹介すると楽しいかも・・・^^ リズムについても!

奈々福浪曲は、メジャーマイナーがはっきり分かれていなくて、節の中でも行ったり来たりします。「モク」に興味あるなあ。やってみてほしいなあ! 私がパンソリワークショップ受けたいぞ!

聖民メジャーマイナーですが、パンソリでも行ったり来たりしますよ。私も「きっかけ節ってこんな感じ・・・」みたいなレクチャーを受けてみたいです!

 

 

このとき、昼の部浅草木馬亭の舞台の真っ最中、新大久保では在特会による無残なヘイトスピーチが大々的に繰りひろげられていたのでした。

 

このときから、明確に、かもめ組は、「こんな時代だからこそ」をひそかな合言葉に、語りの声を行き交わせ、境を越える場を開く道へと共に足を踏み出します。

 

2013年11月23日

かもめ組 新潟再訪 舞台は新潟市内 シネウィンズ!

このとき新潟日報に寄せた文章をここに再掲します。

 

 浪曲からパンソリへ、パンソリから浪曲
  懐かしいカモメが二羽、新潟へ。
 

 さてさて、お集まりの皆様は、一年前に新潟で起きたひそかな大事件をご存知でしょうか? 千年前に生き別れた姉と妹が、姉は三味線の調べとともにこの列島の言葉で浪曲を、妹は太鼓の響きとともに海の向こうの半島の言葉でパンソリを、歌い語りながらてくてくと道行くうちに、なんと新潟の万代島旧水揚場でばったり出会った。見つめ合えばなんだかよく似た懐かしい顔。二人は千年ぶりの再会の喜びを、浪曲で、パンソリで、歌い語った。そのとき水揚げ場には群れなす白いカモメ。その日から、この千年のさすらい姉妹、玉川奈々福と安聖民は、旅するカモメと名乗るようになりました。

 思えば、いつの世も、大きな声や力に弄ばれて地を這うように生きる者たちは、「きっと伝えておくれ カモメさん」と、(これは日韓で歌われた演歌「釜山港へ帰れ」の一節!)、カモメのように旅ゆく者たちに願いをかけてきたものなのです。カモメたちは無数の思いを受けとり、海を渡り、道を伝い、思いを結び、祈りをつないで、脈々と名もなき者たちの物語を歌い語る千年もの道のりを生きてきたのです。

 この世に歌が生まれ、語りが生まれたはじまりのときへとさかのぼれば、そこには旅する異人(まれびと)、芸能の民がいます。いずこより現れては去りゆく異人を神と信じた者たちがいます。はるかな昔、神を迎えての宴の場、祈りの時こそが芸能のはじまりの場でした。それからずっと異人たちの旅はこの世とあの世を結び、見えない世界への通い路を開き、この世の痛み苦しみ呪縛を解きほぐし、名もなき者たちこそが主人公の歌や物語を紡ぎだしてきた。

 そのはるかな道のりを、もしや、あなたは忘れてはいませんか? 
 今ここで地を這うように生きる私たちこそが主人公の歌や物語を、あなたは見失ってはいませんか? 

 新潟と言えば、ふっとこんなことを思い出しもします。瞽女さんが三味線で弾き歌う瞽女唄を蚕に聞かせりゃ、美しい絹糸が取れたという。三味線の弦は絹糸です。かつて、蚕から絹糸を紡ぎだす技を列島にもたらしたのは半島からの異人です。この異人は死してのち、道行く芸能者たちの秘かな神になったといいます。絹糸に結ばれた半島と列島の秘かな祈りの道。それは、千年さすらいカモメ姉妹、玉川奈々福と安聖民を結ぶ道でもあるのです。

 来たる11月23日、懐かしいカモメたちがふたたび新潟に舞い降ります。泣いたり笑ったり喧嘩したり愛し合ったり、ちっぽけだけどきらりと光る名もなき者たちの物語を歌い語ります。それはきっと、あなたの物語でもあるのです。

 

 それからあとは、ほぼ年に1度のぺ―スでかもめたちは集まっては声を放って遊んでいます。

 

こんな時代でありますから、大いに遊ばなくては、ですなぁ。

 

2014年11月15日  2度目の東京公演 @亀戸・カメリアホール!

 

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2015年2月21日  初の大阪公演@ドーンセンター

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2015年3月15日 福岡公演@西南学院大学

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2017年7月9日 東京@日本橋社会教育会館

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