東北行  メモ02

せんだい311メモリアル交流館で、展示を見て、一階スペースに座っていたら、女川出身だという女性に話しかけられた。

「どこから来ましたか」

「奈良からです」

「わたし、女川出身なんです、女川ってわかりますか? 「原発のあるあの女川」

「ええ、わかります」

「私の家のあったところも津波にやられて、今では嵩上げ工事で地面の下になっているんです、瀬尾夏美さんが陸前高田を「二重のまち」と書いたように、私の町も二重のまちになったんです、でもね、私は、ただもう、私の住んでたところはもう埋められちゃったね、ここでは今では私はヨソモノだね、って、ただ寂しくなっただけだったんです、ちょうど2番目の姉がなくなって女川に遺骨を取りに行ったときに、そんなことを思ったんです、そしたら、その直後にここで瀬尾さんたちの展示が始まってね、ええ、『あわいゆくころ』はその前にもう読んでたんですよ、ああすごいなぁと思ったけど、そう思っただけだったんです、でもね、展示が始まって、瀬尾さんたちの『二重のまち』を読んで、ああ、瀬尾さんは外から陸前高田に来た人なのに、なんで自分の町を埋められた人の気持ちがあんなにわかるんだろう、私が言葉にできなかったことを瀬尾さんが言葉にしてくれて、なんでそんなことができるの、ほんとにそう思って、瀬尾さんにもそう言いましたもの、瀬尾さんが言葉にしてくれた私の気持ちに出会って、嵩上げされた地面の上でただ寂しがってた私がね、なんだか元気になったんです」