民俗的な世界においては土器を制作するのもまた女性たちの仕事です。

「土器を造る火、「外」から得られたものを人間世界に有効にもたらす火、これらは女性に統べられることで生産の火と見なされうるものです。」


この「生産の火」と対極の「破壊の火」を扱うものとしての男性性を中島智は語る。
そして、生産の火と破壊の火を両方を扱うマージナル存在、シャーマンと相似の存在としての「鍛冶師」を語る。


「鍛冶師というのもこの女性原理としての生産の火を扱うことの許された特異な存在なのです。彼らは屑鉄や銅の原石を人工物に変える力をもっています。この点では彼らは女性の力を纏っているのです。ところが彼らが造り出すものは樹木を伐採し、動物を仕留め、大地を耕し、戦争に用いるための道具なのです。また男たちが用いる火は主に焼き畑です。その目的が何であれ、それらに共通しているのはそれが破壊力であるということです。すなわち鍛冶師というのはその生産力によって破壊力を生み出す両義的な存在なのです。あるいは女性原理と男性原理をあわせもった両性具有的な存在なのです」