森崎和江  不穏な詩

妣(はは)

 

桃太郎

風車が赫いね

 

西のそらに

いちめんにまわっているよ

 

みえないのかい

そうかい

 

血の海さ

 

 

遊女

 

つばを吐いて

とび散ったほうへ歩く

 

風がないね

 

 

 

たとえば紫宸殿の

即位の秘儀

その観念をかぜにさらし水にさらし

 

つみくさの丘にすわる

 

たとえば紫宸殿の

神の子の舟

その観念をさかのぼり漕ぎわたり

 

うなばらの波にあそぶ

 

そらひびく わが産井の里

 

ふきすさぶははよ

おかあさん

 

しっ

かあさんは虫ですよ