◆「ナヨロの海へ」
私は日本人のまねをしている日本人ではなかろうか
◆「悲しさのままに」
かつての日本の植民地で生まれ育ったものですから、自分を生き直したくて、くりかえし日本とは何だろう。わたしとは、いのちとは、と自問しながら彷徨するのは、やむをえぬ道行きでした。
◆「善知鳥と産女土偶」
いのちの母国。
長い旅の末にたどりついたところ。
ああ、出会えたよ。この列島の先行文明に。あの建国神話とは異質の、いのちの母国に。 国のために産み、国のために死ぬことを、くりかえしくりかえし他民族の少女と共に求められ、犯され、売られ、殺された近代建国期。その歳月の間信ずることを求められた古代建国神話。だからこそ帰国して探し求めたのは消し合い殺し合うことのない精神の山河でした。その愛とたたかいの足跡。生命の平等観とその実現への祈りだった。そんなもの、夢だよと笑われながら。
でもね、ほら、今ここに。ね、産女土偶が出土しているよ。ね、はるかはるかむかしの人の、精神のすがたがみえる。