シンボルスカ 詩 「舞踏会」  土着のこだまの他には 音節で語ることのできるこだまがない以上……

舞踏会 シンボルスカ 訳:沼野充善

 

まだ何も確かなことが分からない以上
(届いてくるべき合図もまだないのだから)
 
まだ地球が今のところ
近くや遠くの惑星とは違ったものである以上
 
地球とは別の 風に名誉を与えられた草も
栄光を授かった木々も
地球の動物のようにしっかりと存在を根拠づけられた動物も
まだ影も形もない以上
 
土着のこだまの他には
音節で語ることのできるこだまがない以上
 
より優れているにせよ、劣っているにせよ
どこかで新たなモーツァルトたち、プラトンたち、エジソンたちが
現れたなどとはまったく聞かない以上
 
 
私たちの犯す犯罪が
お互いの間だけで競い合っている以上
 
私たちの思いやりが
当分はまだ何にも似ていなくて
その不完全なところさえ比類ないものである以上
 
錯覚だらけの私たちの頭だけが
錯覚だらけの頭として通用する以上
 
これまで通り私たちの口蓋だけから
天蓋にも届くような大きな声が舞い上がる以上――
 
私たちはこの地区の消防署の
珍しい来賓としてふるまい
地元の楽団の拍子にあわせて踊ろう
そしてこれこそは舞踏会の中でも
最高の舞踏会だと思えるといい。
 
他の人のことは分からないけれど、私には
幸せになるにも、不幸せになるにもこれで十分。
 
ここはひっそりした片田舎
星たちがお休みなさいと言い
こちらに向かって特に意味もなく
ウィンクする。