【百年大芸能祭 前口上】
お集まりのみなみなさま 百年大芸能祭にようこそ!
人間も、人間以外のあらゆる命も、ようこそ、ようこそ!
さてさて、ほんの百年とちょっと前から、
お金になるかどうか、役に立つかどうかで、命の価値が決められて、
見えない鎖につながれて、血も涙もない数字に縛られて、
あげくのはてにジェノサイド!
しかし、これからの百年は、そうはいかない!
消された命の名前を呼びましょう、
忘れられた命の歌をうたいましょう、
封じられた命の鼓動で踊りましょう、
無数の命を躍って供養、歌って躍って世界を変える、
それが芸能、それが命の本能ではありませんか。
奉一切有為法踊供養也(いっさい ういほう おどりくよう たてまつるなり)
人間だけじゃないよ 鳥も獣も虫も魚も草も木も みんな一緒に
さあ、いくよ、命はびこる新世界!
午前11時、法螺貝が鳴りひびき、「おめでとうございます」の<予祝>の大音声が発せられ、百年チンドン隊が いくのパークを練り歩く。 祭り/祀りのはじまりを告げる音です。 そして、百年大芸能祭「前口上」が読み上げられると、アイヌの歌声が流れだす。 藤戸ひろ子さんとミナミナの会がアイヌの歌を歌いながら、大地を素足で踏みしめ、そこに息づく命たちと歌を交わすかのようにして大地を掌で叩く。
さらにそこに祈りの気配をも漂わせる、異形のおどりねんぶつ、つくもがみの出現……とつづきまして、 それは見えない鎖を振りほどく歌であり、躍りでもありまして、 嗚呼、おどりねんぶつと共に現れた<つくもがみ/人間が放り捨てたモノたちの命の結晶>五体が、ねんぶつの低く力強い調べとともに練り歩けば、思わず手を合わせる人びともいて……
<追記>
この祀りの場には、毎月一回鶴橋本通り商店街でマルシェを開催している「つるのはしマルシェ」の参加があり、そこには手作りの食べ物があり、手作りの雑貨があり、子どもたちによる店もあり、私は子どもショップの10円くじでオモチャの手錠を当てたのでした。子どもたちのスペースでは、紙芝居屋さんが子どもたちをゲラゲラ笑わせてもいたのでした。音楽が流れ、子どもたちが走り回る祭りの場。青空ブックマーケットもありました。祭りの場に本があることも、とてもかけがえのないことだとあらためてつくづくと。 そして、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」を想い起こしましたのでした。全体主義の暴力の中で、本が焼き捨てられる世界の物語。 抵抗する人びとは、ひとりひとりが本になって、本の言葉を自身の声に乗せて語りだす、そんな物語。この日の祀りの場では、ブックマーケットの傍らの芝生に寝転んで、音楽に包まれながら、ひそやかに声に出して本を読んでいた人がいました。遊ぶな、読むな、語り合うな、考えるな、つながるな、勝手に躍るな、勝手に歌うな、という暴力に抗するささやかな祀り、 来年も!