それは、
「慶長5年(1600)を截然たる境として、日本の文学史がほぼ三十年間、見方によってはその倍に当る六十年間、文字通りの空白に帰してしまっている」
ということによる驚き。
この空白の意味するところとは、
関ヶ原の戦役を境に、
「奈良・平安の昔から連綿と持続して来たひとつの文化が崩れ去り、少くともしばらくは地下水となって人々の視界から消えて行った。そしてそれに替ってもうひとつの文化が徐々に形成されるにいたった」ということ。
この大きな転換の時代を読み解くうえで、藤原惺窩、林羅山が語られ、仏教から儒学へと、社会秩序の根本となる思想の転換が語られる。
日本語をめぐって、近松をめぐって、江藤が想像もまじえて語ることがなかなかに面白い。