2012-01-01から1年間の記事一覧
ゲラを読みながらの年越し。2004年に、チェチェン人女性ジャーナリスト ザーラ・イマーエワと、カザフスタンの荒野を対話を重ねつつ旅をした。なぜカザフスタンの荒野なのかといえば、そこはスターリン時代のソ連で1937年には高麗人(旧ソ連在住のコリアン)…
http://www.junkudo.co.jp/odoroita2012.html?topbanner03#05丸善&ジュンク堂の書店員が選ぶ「今年驚いたこの一冊」において、「驚きの出版賞」を、『はじまれ 犀の角問わず語り』がいただきました! ありがとうございます! 書店員さんのPOPにあるよう…
古本屋で『朝鮮詩集』(金素雲訳編 岩波文庫)を買う。 ぱらぱらと眺めて、韓龍雲の項で手が止まる。 「秘密」 韓龍雲秘密ですって―― なんのわたしに秘密なんぞがありますものか。 一度は秘密を蔵ひ込んでもおきました。でも、やっぱりわたしには秘密が守れ…
草津のハンセン病療養所栗生楽泉園に行ってきた。詩人谺雄二さんと歌人金夏日さんを訪ねて。 園に着いたら、必ずまっすぐに納骨堂に行き、手を合わせる。草津は、行くたびに雪。納骨堂の向かって右手は、地獄谷。 ここには、巡礼の心持で、やってくる。 谺雄…
私も関わっている「チェチェン連絡会議」の新たな出発のためのイベントの案内です。 このイベントでは、私も出演しているドキュメンタリー映画「いって・らっしゃい」(ザーラ・イマーエワ/岡田一男 2012年)が上映されます。 - 開催日時: 2012年12月2日(…
『琵琶法師』(兵頭裕巳 岩波新書)の第3章「語り手とはだれか」。琵琶法師の語りは、「我」という視点を持たない。琵琶法師は異形の者である。境界上の存在である。 琵琶法師は女の法号を名のり女官をおもわせる官職を私称した。法師形でありつつ、袴をは…
私は眼鏡をはずすと、耳も遠くなる。電話をするときには眼鏡は必需品。などということをいきなり言うのは、『琵琶法師』(兵頭裕己 岩波新書)を読んでいて、こんな記述にぶつかったから。「芳一(耳なし芳一)がそうであるように、琵琶法師はふつう盲人であ…
「逢いたくて逢いたくて」「ウナセラディ東京」「恋の奴隷」「小指の想い出」「黄昏のビギン」「喝采」「いいじゃないの幸せならば」「月がとっても青いから」「三味線ブギウギ」「四つのお願い」「プカプカ」「ふしあわせという名の猫」「ちっちゃなときか…
『災厄と身体 破局と破局のあいだから』(季村敏夫 書肆山田)を読む。 そこには、心の深いところからじりじり滲み出して、出会った者の心の深いところへとじんと染みこんでいく、そういう限りなく沈黙に近い声がある。たとえば、「死なんとぞ、遠い草の光に…
読書同時進行中。『純粋な自然の贈与』(中沢新一 講談社学術文庫) 『響きあう異界』(浅見克彦 せりか書房) この2冊は、ざっくりと括れば、わが身の内に潜む異界をめぐる話。「『存在』を語る言葉は、価値づけを与えたり、計量化したり、分析によって仕分…
昨日、11月5日、東京・北の丸の科学技術館で、「いまハンセン病療養所のいのちと向き合う! 〜実態を告発する市民集会〜」に参加してきた。年上の友人、草津の栗生楽泉園の谺雄二さんが世の人びとに向けて放った痛切なる言葉に突き動かされて。以下、その全文…
園子温『希望の国』を観てきた。 http://www.kibounokuni.jp/ 公式ホームページから、ストーリー引用。 - 舞台は東日本大震災から数年後の20XX年、日本、長島県。酪農を営む小野泰彦は、妻・智恵子と息子・洋一、その妻・いずみと満ち足りた日々を送っていた…
風邪ニモ負ケズ、熱ニモ負ケズ、九州ツアー報告第3弾。 10月25日(金)午後7時からは、熊本の橙(だいだい)書店にて、熊本文学隊「橙大学」番外編だいたい大学にて、文学隊番頭さんの跡上史郎さんとトーク。これは、ほとんど、ムチャ振りや迷走や暴走でお…
風邪ニモ負ケズ、熱ニモ負ケズ、九州ツアー報告第2弾。10月24日午後に西南学院大学で、1時間と言われたのに1時間半しゃべってしまった後に、九大の近くの箱崎のブックス・キューブリックに移動。午後7時半から、上野朱さん(古本アクス店主、記録作家上野英…
風邪ニモ負ケズ、熱ニモ負ケズ、九州ツアー終了。10月24日、まずは午後4時から西南学院大学で、ドキュメンタリー『鳳仙花 近くて遥かな歌声』(木村栄文作 1980年)にまつわる話。歌を導きの糸として、日本による植民地支配の歴史と、その歴史がもたらした日…
10月もはや半ば。あわただしい。13日の土曜日は、わが家の小さい人の保育園の運動会で、ほぼ40年ぶりくらいに「玉入れ」なんぞをやらされて、そのやる気のなさを小さい人の母親や友人に指摘されたりもした。(へそ曲がりには、あのような団体競技はちょっと…
10月14日、仙台で、「外国人被災者支援プロジェクト」の一環として催された「せんだい移住者・子どもフェスティバル」で垣間見たこと。そもそも支援プロジェクトの趣旨は以下のようなもの。 「東日本大震災によって被害を受け、復興に向けて日夜たたかってい…
かねてより思うところあり、つい先日お手紙で石牟礼道子さんに作品の薩摩琵琶による説教節化をお願いしたところ、ご快諾の返事をいただいた。 石牟礼さんも、かつてチッソ東京本社前で座り込みをしていた頃、目が見えなくなり、いいんだ、盲目の琵琶弾きにな…
正岡容『定本 日本浪曲史』をひもとく。 序章「浪花節是非」より。「全く世に、浪花節ほど識者の顰蹙をかいながら、僅々五十年近くの間に全大衆の心の隅々まで食い入ってしまった演芸もあるまい。いや、今日でも文化人の過半数には食わず嫌いに嫌い抜いてい…
本日、新潟日報文化面に掲載の、日韓語り芸の競演『浪曲からパンソリへ、パンソリから浪曲へ』(10月7日開催)にまつわる文章です。 - 『響きあう声の場への招待状』 語り芸。たとえば日本で言うなら、浪曲、説教節、瞽女唄(ごぜうた)等々。韓国ならば、…
ぎぃすぃぬくゎよ ぎぃすぃぬくゎよ くぅとぅやしらんな むぬやしらんな ねぃぐふ ねぃぐらんだねや ぎぃすぃぬくゎぬ いただきむんどお ぎぃすぃぬくゎぬ いただきむんどお しらぎぃれぃば ゆきぐむぃなりゅっとお ましるぐむぃなりゅっとお人間の子よ 人間…
都の写真美術館で『スケッチ・オブ・ミャーク』を観てきた。音楽プロデューサー久保田麻琴が出会った宮古島の神歌・古謡の数々、歌い手のしわくちゃのおばあたち、神司たちが味わい深く、語り、歌う。おそらく、共同体の崩壊とともに、歌い手の老齢化ととも…
奄美から、熊本経由で、ようやく帰還。熊本で1日4コマ×4日間の集中講義をやってきて、青息吐息……。奄美の記憶のかけらの幾つか。
★まずは、新潟。10月7日。 「浪曲からパンソリへ。パンソリから浪曲へ」パンソリ:安聖民 浪曲:玉川奈々福 道案内人:姜信子。 浪曲もパンソリも演者は女性。 その芸の素晴らしさは太鼓判! かなり素晴らしい試み(自画自賛!)、 乞う、ご期待! ★そして福…
ジョン・ケージを読んでいる。 音に近づきたいと思っている。 ふたたび島に行く前の心構えのようなものを受け取ろうとしている。 ジョン・ケージ曰く―― 「彼(オスカー・フォン・フィッシンガー)はこの世界にある一つ一つに宿っている精霊について話し始め…
ここのところずっと、ごくごく身近なところで、とんでもないことが起きたり、ひどい話を聞いたりで、ふつふつと湧き起こってくる怒りで、仕事が手につかない。 そのほとんどが、社会的に強い立場にある人々の、他者への想像力に欠けた(もしくは想像の方向…
「東 うちむかて/飛びゆる 綾蝶(あやはびら)/まずよ 待て/蝶/伝言(いやり) 吾ぬ頼ま」魂を想う晩夏の夜。 「畳薦(たたみこも)平群の山の 熊かしが葉を うずに挿せ。その子。」植物を寄り代に頭の上に神を降ろすということを想う。
8月25日(土)、馬喰町のart+eatにて、盟友の浪曲師玉川奈々福が、拙著『はじまれ 犀の角問わず語り』のうちの一篇、「英雄ナージャ」を朗読した。薩摩琵琶の後藤幸浩さんと、事前に軽く打ち合わせと、音のタイミングのリハをしただけで、ほとんど即興で…
ブラジル日本人作家 松井太郎小説選『うつろ舟』を読む。解説の西成彦さん曰く、「日本人が日本人であることを止めた元日本人の文学」「日本語で書かれてはいるが、日本語で語りかけてこようとするような『よそ者』に対しては、懐かしさを覚えるどころか、ほ…
熊本に行ってきた。『東アジア文化論』という、まあ、なんでも話すことのできるタイトルの集中講義を、5日間、一日4コマ、駆け抜けてきた。その一日、学生たちを連れてハンセン病療養所、菊池恵楓園に志村康さんを訪ねた。菊地野という社会から隔絶された荒…