2019-01-01から1年間の記事一覧

本を読みつつ、雑感。

「希望なき人々のためにこそ、希望は私たちに与えられている」 by ヴァルター・ベンヤミン 「神話の呪縛を断ち切りながら瓦礫の山を掘削する思考が、「忘れがたい」生の記憶を探り当て、それを今ここに呼び覚ます像に結晶するとき、時代の闇を貫く道を切り開…

이어도사나  済州海女の歌 メモ

◆海女たちは沖合の漁場をめざして舟を漕ぐ 이어도사나 이 노를 저어서 어디를 가리 진도바다 큰 물로 가세 한 쪽 손에 테왁을 들고 한 쪽 손엔 갈고리 들어 한 길 두 길 들어가보니 저승이 따로 없네 ◆済州海女にも、帆を立てて出稼ぎの地へと航海する舟旅の…

2019年12月18日 陸前高田  たね屋さんで、たね屋さんの歌を聴いた。 言葉の発生/発声

半年ぶりの陸前高田。 官製 津波伝承館からまっすぐ海の方へ。 橋を渡って防潮堤へ。 (この橋は、防潮堤と町を切り離す橋のようでもある) 防潮堤には献花台がある。 (ここに献花するのは町の人ではなく、外からやってきた人のようでもある) 防潮堤が視界…

気仙沼 リアス·アーク美術館に行った。その2

この美術館の展示は、学芸員の確信犯的主張に貫かれている。 だから、胸に響く。深いところまで声が届いて、ハッと気づかされる。 ああ、簡単なことだ、 太古より、人間は、水があって、土があって、森があって、食って生きていけるところにしか棲みつかない…

気仙沼 リアス·アーク美術館に行った。常設展「東日本大震災の記録と津波の災害史」

ここは美術館なんですね。 で、学芸員もまた震災の被災当事者でもあります。 震災直後、調査員として美術館の学芸員たちが気仙沼の被害状況の写真を撮る。 そして、その写真にコメントを添える。なので、展示されている写真のキャプションは、文字どおり学芸…

メモ「海女抗日闘争」・ 出稼ぎ  

1932年 済州島 海女たちが頭にはしっかりと手拭を巻き、背にはつつましくも食料を背負い、手にした海女仕事の道具のホミとピッチャンを振り上げ、万歳と叫びながら行進した。 「私たちの要求に剣で応じるならば、私たちは死をもって応じる」 時はさかのぼる…

東北行  メモ01

やっと奈良にたどりついた。 東北の旅の間、復興という名の復興ならぬ何か禍々しいものを見続けて、 嵩上げという名の記憶殺しの現場も見て、(いまはまだ現在進行形の現場に立てば、作られつつある歴史の裂け目がまだ見える)、 震災遺構の瓦礫も見て(いや、…

東北行  メモ02

せんだい311メモリアル交流館で、展示を見て、一階スペースに座っていたら、女川出身だという女性に話しかけられた。 「どこから来ましたか」 「奈良からです」 「わたし、女川出身なんです、女川ってわかりますか? 「原発のあるあの女川」 「ええ、わかり…

『ヴァルター・ベンヤミン』  メモ3  名づけるものとしての言語

創世記 すべては名づけの言葉からはじまる。 著者の柿木さんによって語られる、ベンヤミンの「純粋言語」、名づけとしての言葉 人間の言葉は突き詰めれば「名づける言葉」である。言葉を発するとは、名づけることなのだ。 神が、創造した世界を「きわめて良…

『ヴァルター・ベンヤミン』  メモ2

24歳のベンヤミンの言葉。 夜に抗って闘う者は、その最も深い闇を揺り動かして、夜の光を引き出さなければならない。この命がけの大いなる努力においては、言葉は一つの段階にすぎない。しかも、言葉が最初の段階ではありえないところにのみ、言葉はありうる…

岩波新書『ヴァルター・ベンヤミン』  メモ

まずはプロローグから。 <死者の記憶を呼び出す言語><死者と共に生きる生者の言語><名づけとしての言語>を思いつつ、読みはじめる。 パリ、プラハで見たホロコーストの死者たちの碑に、記憶のかぎり刻みつづけられる「名」を想い起こしつつ。 (歴史の…

『熊野と神楽』メモ

日本各地にある「神楽」は修験(=山伏)がその生成に深く関わっている。 芸能者としての修験を考える原点としての熊野、そして湯立神楽。 <二つの視点> ① 熊野信仰の中核にある「湯」の信仰、それに基づく湯立、そこから展開した湯立神楽がある。 ②熊野の…

鄭靖和『長江日記』翻訳進行中 ~一女性による韓国上海臨時政府秘話~

韓国も大文字の歴史の例にもれず、良くも悪くも歴史は男のものであり続けた。 日本の植民地支配に抗して、1919年に上海に設立された大韓民国臨時政府は男性の独立運動家たちの手によるものであり、男性独立運動家によって動かされ、闘われてきた、ということ…

満月の夜の狼のように ~水俣異聞~ @西荻窪・忘日舎

今夜も雨が降っています、 もう百年も降りつづいています この闇のなか 私は溢れる水に舟を浮かべますこれは私のいのちの舟です 一面の黒い水です 私はひそかな声をあげる それが出発の合図 「さあみんな、舟を出して、早く自分の舟を出して」 いまここが雨…

「コミューンは外部である――存在の闇と離脱の政治学  李珍景インタビュー」より

最近の興味関心は「穴」を作ること。 そういうわけで『不穏なるものたちの共同体』の著者でもある李珍景が『HAPAX11 闘争の言説』に寄せた声にじっと耳を傾ける。 ---------------------------------------------------------------------------------- 「コ…

ひそかな日本国内ディアスポラの記憶に、奈良で出会う。

きのう(9月28日)、奈良で一番最初に親しくなった友人たちを訪ねていった。 奈良で、水俣の友人つながりで、出会った人たち。 ケーキ作り得意女子と、うどん作り得意男子。 ケーキ女子は北海道・江別出身で、もともとは母方は山形、父方は福島相馬。 両親は…

台風の済州の記憶  2019年9月19日~24日 

台風接近中の9月22日、もうほとんど暴風雨の中を、海辺の東福里にひとりのハルモニを訪ねる。 元海女、そして소리꾼( ソリクン 歌い手)。16歳の頃から、村で死者が出れば、死者を送る「行喪歌(ヘンサンソリ)」を歌うようになった。 歌は、やはり「行喪歌…

『分解の哲学  腐敗と発酵をめぐる思考』(藤原辰史 青土社)   メモ3

「生態学的な言説にはいつもナチズムの罠が潜んでいるのである。」 「分解」を語る時に、忘れてはならぬ問いとして、著者が繰り返し語ること。 では、ナチズムやスターリニズムを振り切ったうえで、なおも生命と人間社会の多元的で連鎖的なふるまいをとらえ…

『分解の哲学  腐敗と発酵をめぐる思考』(藤原辰史 青土社)   メモ2

ゼノ神父とマリア・北原怜子の「蟻の街」(バタヤ/屑拾いの街)をとおして、「分解」を語る。 各々気ままな行為とも言うべき自己の快楽の集合体が、なぜか、全体として生態系ならびに人間社会のメンテナンスに向かうことが、分解の世界を貫く原理なのである…

『分解の哲学  腐敗と発酵をめぐる思考』(藤原辰史 青土社)   メモ

「土や水や微生物のはたらきはもっとアナーキーである」 「生命を生存させたままで<帝国>を死滅させるにはどうすればいいのか。そのヒントもやはり腐敗、つまり分解にある。」 生産力を基盤にした発展史観の上に形作られる「世界」、(この世界の行き着く…

かもめ組 小史! (神戸・凱風館公演前にちょこっとまとめときます。昔のことより、ここ10年のことのほうが不確かな年頃になっちまったもんで……)

まずは久しぶりに神戸に集合のかもめ組。かもめ組としては初神戸です。もうチケットは完売です。 テーマは「乱場(ナンジャン)」でござる。 声の力でカオスを呼んで、世界の再生の場を開く、という、壮大なテーマですな、これは。 さかのぼれば、7年前、は…

ポグロムの予感。  でもね、予感というのは、もう既にとりかえしのつかないことになっている世界に漂う気配のことでもあるんだよね……。

10日間、浮世を離れて、旅をしていた。 戻ってきて、無惨なメディアの状況、何も知らずに尻馬に乗る愚か者どもの跋扈にほんの少しだけ驚いた。 ほんの少し、というのは、10日も経てば、もしや静まっているんじゃないかと、ほんの少しだけ、ほのかに期待をし…

『分解者たち  見沼田んぼのほとりを生きる』(猪瀬浩平 生活書院)  メモその3

水俣に行く前に、じっくり読みたいと思っていた『分解者』を読了。 近代合理主義と植民地主義と今となってはグローバル資本主義がもたらす徹底的な「分断」を、いかに「分解」するか? 生産者/労働者/消費者でしか存在しえない存在となった人間が、分解者…

『分解者たち  見沼田んぼのほとりを生きる』(猪瀬浩平 生活書院)  メモその2

2017年7月下旬 相模ダム建設殉難者追悼会に筆者は自閉症の兄とともに参加する。 戦前にダム建設で亡くなった日本・中国・朝鮮の犠牲者に対してだけでなく、前年7月のやまゆり園事件の犠牲者に捧げる黙祷も合わせて行われたそのとき、自閉症の兄が叫んだ。「…

『分解者たち  見沼田んぼのほとりを生きる』(猪瀬浩平 生活書院)  メモその1

水俣で野生集会を持つ前に、『分解者たち』を少しずつ読む。 見沼田んぼに追いやられてくる「ごみ」、「排泄物」、「遺体」、「障害者」、「鶏や乳牛などの家畜、様々な生きもの」、そして「農的営み」。 それは「首都圏/東京という歪に肥大化した身体の肛…

お盆休みも翻訳ホンヤク日々ほんやく。

『長江日記』(鄭靖和著)を翻訳している。本当のデッドラインの締切目前で凄まじく追いこまれている。 鄭靖和はこんな人。 鄭靖和(チョン・ジョンファ) 1900年8月3日ソウルに生まれ、11歳になる年に大韓協会会長であった東農 金嘉鎭キム・ガジン(1846∼19…

奈良散歩 その2 夕方に思い立って、真弓山長弓寺 

先月末に奈良に越して、ようやくあたりを見回す余裕も出てきて、ご近所探索をはじめている。 なにしろ神々(修験、新宗教、権威によって邪教淫祠にくくられた神々も大いに含む)の山、生駒山は目の前。 ご近所には真言宗、天台宗、融通念仏宗といった宗派の…

奈良散歩 その1 真夏の生駒山中は殺人的に暑い。教弘寺。あまりに暑くて、ここはまだざっくりとしか書けない。

役行者像があると聞いて、ぶらりと生駒山山中へ。 本堂撮影し忘れた。次回に撮ってこよう。 本堂裏に不動明王像。京阪奈道路開通後、滝が枯れたんだそうな。水脈が断たれたんだな。水なしの不動明王。 不動明王拡大。 境内には役行者。 役行者さらに拡大。 …

1948年~1949年、ある朝鮮人の若者が、ソウルより日本へと、在日朝鮮人の友に宛てた手紙の中の言葉。

たくさん学べ。君はいま祖国の現実をどう見ているのか分からぬが、いま祖国は学徒を呼んでいる。われらは水を飲みたい。喉が渇いている。だが、われらの喉を潤してくれる者はひとりもいない。力を尽くして学べ。僕は、ただ、学ぶことのできない、学べない環…

「無数の安寿、あるいは声のアナキズム」 @ 20190618立教大学「こっちあっちの人類学」(奥野克巳教授) ゲスト講義草稿

「無数の安寿、あるいは声のアナキズム」 前置き1 私の国籍 昔、自分のことを在日・韓国人と思ってました。物心ついた時から、自分は韓国人であると。(日本国籍でも、北朝鮮籍でもないという意味で) ところが、最近になって、韓国から取ってきてわが家の…