2016-01-01から1年間の記事一覧

森崎和江の「八百比丘尼」の旅に思いを馳せつつ、新たに「八百比丘尼」を語り起こす。

旅するカタリ その1 <なにかが道をやってくる> 2017年1月7日 於・馬喰町ART+EAT 午後6時より 浪曲師玉川奈々福、舞踊手堀川久子、祭文語り:渡部八太夫。妖しの旅の者たちとともに、今の時代には忘れ果てられている「旅するカタリ」の場を開きたいと企ん…

「さまよい安寿」と「八百比丘尼」

人魚の肉を食べたために不老長寿という運命を生きることになった女がいる、 (これは「業」というべきかもしれない、いずれにせよ、限りある命の人の世で、ひとり不老長寿であることはけっして幸せなことではない)、 その女は「八百比丘尼」と呼ばれるよう…

ここ数年ずっと「旅するカタリ」ということを考えていた。

そもそも、古来、語りとは、旅の賜物であるから、「旅する」「カタリ」というのは表現としてはダブり感があるのですが、私たちの時代の物語は旅を彼方に置き忘れてきてしまったがゆえに、ことさらに「旅するカタリ」なのです。 さらには、「語り」とは「騙り…

先島の声を分かち合います! (「けえらんねえら 唄いじょうら!」に賛同する方々)

玉川奈々福(浪曲師) 管啓次郎 (詩人) 安聖民 (パンソリ唱者) 渡部八太夫(説経祭文語り) 浅野卓生 (編集者) 田村元彦 (西南学院大学教員、KBCシネマ企画ディレクター) 藤井一乃 (編集者) 今福龍太 (奄美唄者、群島漂泊者) 中川五郎 (フォー…

「けえらんねえら 唄いじょうら!」の趣旨

けえらんねえら うたいじょうら! これは石垣島の言葉。「みなさん、うたいましょう」という呼びかけです。 このところいろいろときな臭くて騒がしいこの世の島々、石垣島をはじめとする先島(与那国、宮古)でも、陸上自衛隊の配備による島の軍事化が日本政…

けえらんねえら 唄いじょうら! (これは石垣島の言葉。「みなさん 唄いましょう!」という呼びかけです)

けえらんねえら 唄いじょうら! 〜先島から、この世のすべての島へ、声を結んで、歌え、いのちのうた!〜 2016年12月17日 13:00 〜16:00 @東中野 ポレポレ坐 参加費:3000円 (1ドリンク付) <先島からの声を放つ人> 大田静男(唄者、八重山芸能を歌い語…

沖縄に行く前に、これは観なくてはと思っていた。

山城千佳子『創造の発端 −アブダクション/子供ー」を新宿で観てきた。 面白かったなぁ。プレスリリースにこうある。 - 「山城は、これまで沖縄戦の記録と記憶の継承に始まり、在沖米軍基地によって引き起こされる沖縄が抱えてきた複雑な状況と向き合い制作…

ヨブ記をパッと開いてみたのだ。

神と称する者に、「怒るな」と言われたのだった。 「怒りをもってこの世を変えることなどできぬのだ」と言われたのだった。 「この世の不条理をおまえが怒りをはらんだ声で語るとき、まるで私が責められているように感じるのだ」と言ったのだ。 私はひどく驚…

リービ英雄が語る、古井由吉との「書くということ」をめぐる対話。

「書くということは本質的に、どこか母語の外に出て、戻ってくるということ。ぼくがはじめてこういう話をしたのは、作家デビューをする前、古井由吉という、誰よりも日本語を、まさに母語として極めた作家と話したとき。そのときに、書くということが、日本…

トークイベント前口上

<韓国の小説を読む愉しみ>のために。 まずは、私、姜信子の韓国文学体験。 植民地期の李光洙をはじめとする作家や韓龍雲をはじめとする詩人たち、戦後では崔仁勲、李清俊といった重厚な作家たち、少し変わったところでは李外秀といった作家。かなり偏りが…

いまふたたびの、はじまりの荒野

<1>「旅と物語」。そんなテーマの会に参加することになって、「遠い東のチャガイ」のことを思い出した。ロシア極東へと流れていった朝鮮人たち、後にスターリンによって中央アジアに追放され、一代ごとに生きる場所を変え、旅を生きてきた人々。高麗人か…

 現代民話考⒑『狼・山犬 猫』より

むがす、むがす、あつとごぬ、おずんつぁんど、おばんつぁんが、えだんだと。おずんつぁんが、めえぬず(毎日)えっしょけんめ(一生懸命)かしェえで(稼いで)家さ帰っても、おばんつぁんは、あてげえわり(接待が悪い)んだど。ほんで、おずんつぁんは、…

無法な暴力がますます跋扈する2016年夏。今日は7月31日。都知事選投票日。痛みに耐えかねる心で、レヴィナスを読み返す。

メシアとは私のことであると言ってしまったら、確かに気狂いと言われても仕方なかろう。 でも、救済者として天から降臨するメシアを斥けるレヴィナスの意志は、心に響く。 外部からの救済の断念。 断念。 この言葉は絶望的な響きをもっているな。 でも、ここ…

 宗教意識論から見た鎌倉仏教

立論の出発点。ここのところはとても重要。 「民衆にとって、教義は二の次である。大切なことは、そうせざるをえない民衆の心情を受けとめて、そこから考えることのはずである」 「知識人でもない民衆の信仰=宗教意識の立場から、民衆の念仏の場と、念仏の…

光明真言、融通念仏、時宗、真宗仏光寺派  メモ

「一人の唱える念仏は万人に、万人の唱える念仏は一人のために」これは融通念仏(大原の良忍が宗祖の念仏信仰の一派)の考え方。 叡尊の光明真言に通じ合う。光明真言:光明真言の功徳と同信者の助け合いによる救済、その確認のために名前を過去帳に記入する…

真宗と真言宗 神仏にたいする感覚の違い。 メモ

「山岳信仰の場合、ひとは身を浄めて山に入り、木にも岩にも滝・湧き水にも礼拝する。もちろんそこに祀られている龍神の類、不動、観音、地蔵、役行者、等々(山に祀られる神仏の種類は意外に少ない)にたいしては真剣に祈りを捧げて加護を乞う。だが、その…

浄戒と穢れ メモ。

13世紀日本の仏教の風景のうちの一つ 「律僧が救癩や非人救済にたずさわるのも、浄戒をたもつゆえに冒されることがないと信じるからである」(P191) 禅僧、律僧は、斎戒を持する持斉と同じく浄戒をたもち必要な約束ごとを守るゆえに、災いを遠ざけ死のよう…

 『修験と念仏 中世信仰世界の実像』(上田さち子 平凡社 2005年)

「十二世紀初頭の他力の念仏が人間の罪業意識と無力感を深めてゆく時期に、民衆のなかでは、自力の極致ともいうべき、役行者を先駆者とする修験が姿を現しはじめていた。十二世紀には、必ずしも単に末法思想と無常観が世上を覆うた時代でも、権門寺社が民衆…

『古風土記』の巨人

「巨人が国を開いたという説話は、本来この民族共有の財産であって、神を恭敬する最初の動機、神威神力の承認もこれから出ていた。それが東方に移住して童幼の語と化し去る以前、久しく大多良の名は仰ぎ尊まれていたので、その証拠は足跡よりもなお鮮明であ…

百合若大臣の足跡

妙義山には、山上の石の窓を大太(だいだ)という無双の強力が足をもって蹴開いたという話がある。中山道の路上にこの穴がよく見える処があり、そこの半年石(はんねいし)の上に大きな足跡があるのは、その時の記念という言い伝えがある。 その大太は南朝の…

 八王子 川口 縄切(なぎれ)

柳田国男に「ダイダラ坊の足跡」という小文がある。 冒頭の一文。 「東京市はわが日本の巨人伝説の一箇の中心地ということができる。我々の前住者は、大昔かつてのこの都の青空を、南北東西に一またぎにまたいで、歩み去った巨人のあることを想像していたの…

『サンパウロのサウダージ』  メモ

レヴィ・ストロース。序文より。「語源にしたがえば、<ノスタルジア>とは過ぎ去ったものや遠い昔への感情である。一方、<サウダージ>や<あわれ>はいまこの一瞬の経験を表象しているように思われる。感覚によるか、あるいが想起によるか、いずれにせよ…

 旅の先々で、

お宮があれば、おみくじを引く。旅の行方を占う。★2016年6月8日 広島の宮島 厳島神社にて。旅のはじめのご託宣。40厳島神社 御神籤 「白檮宮兆(かしはらのみやのちょう) 大吉」これは末の子に生れても、そうりょうのやくを務るむるうらかたにて、…

たとえば「小栗判官」といっても、道ゆくほどに、語りもさまざまに変わる。

以下、備忘用メモ。そもそもは最初に『鎌倉大草子』があったという。そこに1423年、関東管領足利持氏に攻めれらて敗れた常陸の小栗一族の話がある。 『小栗実記』には、戦に敗れて常陸から落ちのびて、相模の国で横山一族に毒殺されそうになる小栗判官を…

 神というものは・・・ <メモ>

放浪の説経語りのような心持ちで道を歩いて、新しい宿場に入るごとに寺社を訪ねて、道々の地蔵や道祖神や山の神や名も知れぬ神の祠に手を合わせて、道をゆくことは、神を訪ね歩くことなのだと合点しつつ、考えた。神と呼ばれる存在は太古より無数にある。今…

 さまざまな「小栗判官」 まずは写真帖

2016年6月17日、今日は晴れている。日差しがちりちり痛い。垂井宿と赤坂宿の間、青墓。今では殺風景な旧道。 青墓 ここに遊女照手の墓。ここでは照手は遊女と書かれている。 照手だけでなく。義経伝説も。碑やら仏像やらすべてここに集めておいた感あ…

旅の写真帖  中山道 柏原宿

中山道を柏原宿めざしてゆく。 柏原宿の入口には日枝神社 十王権現 毘沙門堂とも書かれている。 標識は「やくし」とある。お薬師さんへ。お宮参りを名目に人々が旅に出る。 標識もその建前をきちんと守る。 伊吹山の特産のもぐさは、亀屋佐京商店。ここの番…

旅の写真帖  中山道 醒井宿

番場宿を通り過ぎて、醒井宿へ。 ここは伝教大師最澄が掘り当てた居醒の清水が湧く。 清水から地蔵川が流れだす。ヤマトタケルが傷を癒した清水とも言われる。 清水を歌に詠んだは、対馬にて江戸と朝鮮のなかだちのために心を砕いた雨森芳洲。 通信使ととも…

旅の写真帖   瀬田の唐橋〜摺針峠

雨に打たれて、6月というのに、鳥肌を立てつつ、瀬田の唐橋から琵琶湖を臨む。 生まれて初めて琵琶湖を見た。確かに大きい、海みたいだ、大きな琵琶みたいだ、いまにも歌いだしそうだ、 山は三つの頂があるから三上山、別名ムカデ山。山にまきついて人々に…

 道は人住む里に通ず、里の社の神に通ず。

大津 -草津 -守山 - 武佐 - 愛知川 - 高宮 - 鳥居本 - 番場 - 醒井 - 柏原 - 今須 - 関ヶ原 - 垂井 - 赤坂 と たどってみた。 大津は昔の関寺があったという、今の逢坂・蝉丸神社界隈から。 雨が降っている。肌寒い。出発地は神社。背後には比叡山。海のよう…