2010-01-01から1年間の記事一覧

それでも……

40代最後の大晦日は映画を観ながら、ゆく年くる年。「海炭市叙景」@横浜シネマベティ、「息もできない」@わがや。どちらも生きることの哀しみ痛みがじんじんと……。それでも人間は生きてゆく、生きていることそれ自体が希望なのだとも、切々と語りかけてくる…

翻訳ということ

翻訳について考えるために。 - 「알수 없어요」 韓龍雲바람도 없는 공중에 垂直의波紋을 내이며 고요히 멀어지는 오동잎은 누구의 발자취입니까.기리한 장마 끝에 서풍에 몰려가는 무서운 검은 구름의 터진 틈으로 언뜻 언뜻 보이는 푸른 하늘은 누구의 얼굴…

厄介な人々

司馬遼太郎『故郷忘じがたく候』を25年ぶりくらいに読んだ。鹿児島の朝鮮人陶工の村・苗代川と沈寿官を描いたこの小説は、薬の副作用で失意のどん底に突き落とされた長島愛生園の金泰九さんに、民族の誇りと生きる力をもたらしたという。ここ数日、金泰九…

どんどん

浅草木馬亭にて、玉川奈々福独演会 長編浪曲一挙口演『銭形平次捕物控 雪の精』を堪能した。「紫匂う大江戸の、しかも神田に過ぎたるものは、神田祭と銭形平次――」。中入15分を挟んでの90分の大作。昭和30年代にラジオで5年間毎日放送されたという、当時の大…

のどかに日曜日。

本日は編集者の友人たちと自由が丘にて忘年会ランチ、それから白金台のブックオフに行き、文芸創作授業で用いる教材を探す。英語の絵本。意味を取るだけなら、中学1年生レベルの英語力で充分の絵本。さて、これを彼らは作品としてどう翻訳するか。かなり楽…

恐れるな

12月はぼんやりとあっと言う間に時が流れて、早くも半ば。レノンの命日も気がつけば通り過ぎ、今日は赤穂浪士討ち入りの日。イヤダナ、意味もなく忠臣蔵を思い出す。今夜は横浜・伊勢佐木長者町FRIDAYにクレイジー・ケン・バンドを聴きにいく。この一…

ナマケモノ

引越しをしてまだ一年経たないというのに、近々また引越ししなければならぬ雲行き。いよいよ人生の始まりの場所であった鶴見に、ふたたび住むことになりそうな模様。岩波『図書』10月号 「イエスの絶叫をめぐって」(大貫隆)をしみじみと読む。たとえば秋葉…

しるしつき

本日は多摩センターにて、恵泉女学園大学文芸創作クラス 第7集の編集会議、そして第6集の完成打ち上げ。打ち上げで頼んだのは、女子会コース。コースの目玉は生ビールを除くドリンク飲み放題、デザート食べ放題、(料理がやや手薄の感あり)、若い女子たち…

灯台へ

上野朱さんより、森崎和江さんからの伝言が届く。西日本新聞連載を読んでくださっているとのこと。ひどく嬉しい。ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』を読了。人々の心の動き、意識の動きを追い、それを表現しつくす言葉の可能性を追いつつ描かれる人間模様、心…

共感

西日本新聞連載『済州オルレ巡礼〜記憶と空白の旅〜』全十六回脱稿。一息つく。『昼の家、夜の家』(オルガ・トカルチュク)、『生きて、語り伝える』(ガルシア・マルケス)、『嘘から出たまこと』(バルガス・リョサ)、『灯台へ』(ヴァージニア・ウルフ…

春風

愛と孤独はいつも手を取り合ってやってくるもの、愛がなくちゃ生きられない人間は、つまりは孤独を噛み締めて生きるもの、生きるのはとてつもなく孤独なこと、などとぶつぶつ独り深夜に呟くのは『スプリング・フィーバー』を見たから。「こんなやるせなく春…

What’s happning

10月31日に発熱して以来、ようやく復活。 水を飲むべし。本日、医師にそう厳命される。薬とか眠りとかより水だと。うん、確かに私は水を飲まない。言われたとおり、ひっきりなしに水をがぶ飲みしてみたら、それだけで、生気が戻ってきたような気がする。「何…

物語の時間

「ハル、ハル、ハル、ハル……」とモイセイ・モイセーイチがしゃべった。 「トゥ、トゥ、トゥ、トゥ……」と、ユダヤ女がそれに答えた。(チェーホフ『曠野』)。 シベリアへと旅したチェーホフは、また別の文章で、(確か郷里に送った手紙で)、シベリアの町の…

ひきつづき、済州島紀行原稿、12本目まで到達。ほとんど千本ノックを受けているような心持になってくる。(原稿1本当たり、ノック50本)。ノックを受ける前はダッシュ100本、勘違いして「重いコンダラ」を引いていたりもする。ひきこもりのこの家には、いつ…

軽くない

この半月、ひたすら、この夏の済州島の旅をたどりなおす原稿書きの日々。集中して、旅をしていたあの時に自分を引き戻す。ほとんど引きこもって、二週間で新聞連載のための原稿九本、あと六〜七本で完結かな。それにしても、ちょっと疲れてきました……。少し…

天国、到来。

原稿書きの合間に、小島信夫を読み、チェーホフを読む。セルゲイ・ドヴラートフも読みなおそうと思いつつ、原稿に引き戻される。ブルガーコフも読みたいのだけどなぁ……。「チェーホフの登場人物のしゃべることは、たとえば『私はノドが痛い』といったとして…

三河島

三河島に行ってきた。日暮里から常磐線で一駅。その昔、1930年頃、朝鮮から日本へと渡ってきた祖父が最初に住んだのが三河島で、三河島→川崎→鶴見と、我が家は移り住んできた。今日の三河島。駅のホームに立っていると、眼下の教会から出てきた人の電話…

物語

『済州島巫俗の研究』(玄容駿著 第一書房)を読んでいる。済州島で見たクッ(=굿 巫儀)の想い起こしつつ。玄容駿氏の述べるところによれば、シャーマンたる神房(シンバン)がクッの場に神を迎えるにあたって、二つの儀礼形式が複合しているのだという。…

千葉市美術館に、ドライブがてら田中一村展を観に行く。本日が最終日。列をなして人々がやってきていることに驚いた。一村がこんなに一般レベルで注目を集めていたとは。迂闊。6歳で南画を描き始め、神童と呼ばれていた少年時代から、東京芸大に入学するも…

対話という約束

いきなり夏が飛び去った。きっぱりと秋が来た。寒い。こういう日は、やや人恋しい心持になる。ここ数日、文芸創作の学生たちから、続々作品提出。テクニカルな部分、表現上のこまごまとしたことへの注文はもちろんあるけれども、それよりも彼女たちの生の核…

天からの贈り物

久しぶりの休日。今日は9月14日に生まれた孫(!)に会いに行った。孫誕生の報に親しい詩人がある韓国の作家の言葉を贈ってくれた。「孫とは、天が老年にくださる最後の贈り物」。そうなのだろう。老年(=人生の新しいステージと言い変えよう)にいまひと…

詩を書く野蛮人

初校ゲラ420ページを一通り見て、東中野に「祝の島」(http://www.hourinoshima.com/)を観にいく。本日が最終日で、なんとか滑り込みセーフ。漁師の民ちゃんに場を持っていかれたバギやん、ちょっと可哀想だったな。と、映画の本筋からはずれた感想から書き…

“父”たち

相変わらずの猛暑。二週間前に熱中症で倒れた姉が、熱中症がきっかけとなって急性腎不全を起こし、すぐにでも透析を受けねば命に関わるというような事態となり、ここ数日ひどくバタバタしていた。人間の体というのは、一回バランスを崩すと、そのままあっと…

筆でクッをする

済州島写真の整理をしようと眺めてみれば、う〜む、どれもこれも、なんだか、境目の世界のようなものばかりで、私はいったい何処に行ってきたのかと、思わず呟く。神を降ろして執り行う慰霊の儀式である「クッ」にはじまり、イオド(=幻の島)を捜し求めて…

マラドで人生を観る

ここ数日、雨天続き。今日こそはと、一瞬の晴れ間のなか、船に乗って韓国最南端の島マラドを目指す。 マラドに行くには、市外バスでモスルポまで行き(約1時間)、モスルポでバスを降りたら、モスルポ港になるマラド定期旅客船乗り場に向かう。朝10時頃から…

可視化に抗する

28日は、海女博物館に行った。行く道々、本郷堂を見てまわった。「堂」は聖域。「堂」と書くと、何か建物を連想しがちだが、聖なる空間、といった意味合いで、建物ではない。さまざまな神がさまざまな堂で祀られている。特に本郷堂は、村の主たる聖域。こ…

雑録

済州島。 相変わらず、バスに乗れば、ラジオが流れていることが多い。つい先日乗った市外バスの運転手さんは、かかってきた電話に出て、運転しながらしばらくの間携帯で話していた。みかん。日本人は皮をむいてから二つに割って食べる。韓国人はいきなり二つ…

お昼御飯は海辺の絶景の海女食堂で

済州島。 昨夜は中山間地域にある新豊里の儒学者の家に一泊。たまたま隣家で一周忌の法事をやっていた。了解を得て、法事を覗き見る。家族は淡い黄色の伝統的な衣を身につけている。(「陸地」では白い衣であったように思う。忠清南道大田では白かった)。祭…

挟み撃ち

済州島中山間地域。海と山に挟まれたこの地域は、ただそこに住んでいるというだけで、敵と味方、国家とそれに抗する武装隊、生と死の出口なしの疑心暗鬼の狭間に多くの人々が追い込まれていった。山に逃げても殺される。海岸部に降りていっても、やはり殺さ…

「石」という運命

火山島、石の島、済州島。この島で石にとりつかれて40年、石に狂って40年、という男に会った。男は、溶岩が固まってできた玄武岩の、自然の造形の妙、石からあふれ出てくる生命力に突き動かされて、山へ、海へと、石の声にひたすら耳を澄ませて分け入ってい…