2009-01-01から1年間の記事一覧

なぜ書く? 

2月に越すつもりで、部屋探しをしている。物件にあたっていくと、いろいろなことがある。 こんなきれいで広い部屋がこんなお手頃な値段? と不可思議に思っていた物件は、同じ階の別の部屋で硫化水素自殺があったために値が下げられている、と不動産屋さん…

引き戻されて、はじまる場所

集中講義も終り、睡眠不足も少しずつ取り戻し、日常業務に戻りつつある。資料の散乱した部屋を片付け、雑誌原稿のゲラを戻し、ぶつぶつと途切れがちな翻訳の仕事にも取り掛かり……。 秋学期集中講義中に2009年度春学期の文芸創作クラスの作品集が完成した…

放火するがるがんちゅあ

明日より集中講義後半戦。集中講義中は眠れない。日々の課題で学生たちも眠れない。不眠文芸創作教室。今夜は、明日の授業用に、12名の学生の顔を思い浮かべつつ、それぞれへのオススメの一冊を選ぶ。「恋愛太平記」「塵よりよみがえり」「銀河ヒッチハイク…

私は存在する。

レヴィ・ストロースは言った。 世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。 ともあれ、私は存在する。 存在することの歓びのありかを指し示し、語り継ぐものとしての言葉。それを『悲しき熱帯』の最後に読む。 われわれの作り出したあらゆるもの…

堕ちたい生きたい捕らわれたい

さて、半年に一度、かならず巡りくる「書くことを語る」という試練が、目前に迫っている。仕事の合間に試練を乗り越えるための元気づけの本をパラパラ眺める。今日は坂口安吾。小説ではなく評論のほうを手に取る。運命に従順な人間の姿は奇妙に美しいもので…

チチンプイプイ

ぼんやりしていたら、ニョロニョロのみが舟に乗って旅立って、私は岸辺にひとり残されていた。書評原稿脱稿。上野の西洋美術館に「ローマ 未来の原風景 by HASHI」を観に行く。英語での展示タイトルは、「ROME:future deja vu」。千年後の未来に再発見された…

旅ごころ

そろそろ棲みかを変えようと思う。 池のそばの丘の上から、海のそばの丘の上へ。今朝、思わぬ呼び声に、まっすぐ海の丘めざして新しい棲みか探しに出かけて、うん、ここいいかも…。 私の心の海辺に住んでいる百万匹のニョロニョロが船出を待っているんだよね…

ゼロ

「なぜ忘れられた彼らを甦らせないのか。愛情の不足? 愚かなことをいいますね。今どき言葉にし文字にしないで、どうして愛など生まれてきますかね。ぼくとあなたの間柄みたいなものではないですか」(『寓話』序より)小島信夫『寓話』、ようやく読了。これ…

暗号

本日、遅ればせながら、生まれて初めて、新劇の舞台を観る。日本橋三越劇場、劇団民藝「神戸北ホテル」。名前はかっこいいが、実のところ、ハキダメホテル、ゴーリキーの「どんぞこ」のような人間群像。それも、戦時中の、けっして高邁でも立派でもない、で…

同感

目的が何であるかが、最初から分るようなことは、信じるに価しない。(小島信夫)

息を吐いて吸って深呼吸。

新聞連載原稿脱稿。息をするのも忘れる精神的監禁状態から束の間の解放。さあ、明日からまた忙しいぞ。水曜夜は東横線の丘に行って、木曜夜は京王線の果てに行って、金曜夜はJRで宿に行き、土曜は三越、日曜は表参道、ついでに月曜夜は多磨霊園のほうに行…

秘密を抱え込んだ石は砕ける

「いいからそこに座って私の話を聞きなさい」。そうして女が語りはじめる。「秘密」の告白。生きることそれ自体が「秘密」に押し込められるしかなかった、その事実の告白。何が語られるのかは、ここでは言わない。『悲しみを聴く石』(アティーク・ラヒーミ…

人を呪わば、穴無数

ここ数日、ハンセン病関係の資料読みで、「黒川温泉ホテル宿泊拒否事件に関する 差別文書綴り」を読んでいる。世間の声を代表するかのようにして実名や匿名でハンセン病回復者に送りつけられてきた言葉の数々。読むほどに気持が沈んでゆく。どうして、これほ…

お知らせ

「よみがえれ!夢の国アイスランド 〜世界を救うアイデアがここから生まれる〜」 ドキュメンタリー映像『ドリームランド』上映&トークイベント - アンドリ・スナイル・マグナソン(アイスランド作家)×竹村真一(文化人類学者) - 33歳の若さで二度のアイス…

私の造形

さて、いま頭の中を占めているのは、韓国文学(李清俊「あなたたちの天国」)の翻訳の仕事のこと、これからの小さな旅おおきな旅のこと、読むべき本読みたい本のあまりの多さのこと、二次元の言葉と三次元の言葉の葛藤のこと。「本は読めないものだから心配…

秘密漏洩

美人浪曲師玉川奈々福と数寄屋橋でピザを食べる。モッツァレラと下仁田葱のピザ。美味い。表現について語らう。世界への違和感と問いとをけっして手放さずに言葉を探り続ける、<隘路>をゆく表現について。そして、読む一瞬一瞬に歓びが宿る表現について。…

迷路

原稿脱稿後、二日間、腑抜け。心の隙間を物欲が襲う。今のところは禁欲成功。北九州から元司書うた村住人上京。自由が丘で四方山話。秘技とりならべの話に心ときめく。「とりならべ」の画像を後日送ってくれることに。(乞うご期待)。九十歳の小島信夫の最…

投函

elmikamino様 お手紙は、あの人、この人の手から手へ、今は私の手のうちにあります。ありがとうございます。どうかこの返信が届きますように。

私も予約しました。

以下、貴重な記録を世に送り出すための、わが友人の悪戦苦闘の試みのお知らせです。賛同してくださる方、是非ご協力を! ロングインタビュー 鶴見俊輔 戦後日本人民の記憶 DVD制作費協力&予約のお願い昨年の秋から冬にかけて、鶴見俊輔さんに合計8時間余り…

普遍的な祈りでは、私の痛みは消えはしない。

書かない、書きます、書く、書けば、書けない、書けよ、書こうかな、原稿五段活用、呻吟中。昨日会った詩人がこう言った。 在所の災いは在所の祈りで。 4・3事件当時の済州島では、連日針金でつながれた島民の死体が浜にあがり、連日島のシャーマンが浜辺…

なりゆき大菩薩

土曜日に大菩薩まで行ってきた。新宿からバスで大菩薩峠への登り口の上日川峠へ。登り始めは、雨。ポンチョをすっぽりかぶれば、暑い。傾斜が強くなってくると、きつい。暑くてきつくて下を向いて歩く。晴れていれば見えるはずの富士も周囲の山々もガスの中…

登山、下山

銀座阪急の好日山荘にて登山靴を買う。ここの男性の店員さんがプロフェッショナル、山をまったく知らぬ私に、懇切丁寧、くどくならずに明快に、一々すとんと腑に落ちる説明。たとえ一回しか登らぬのでも、登山の足もとの安全は確実にすべし、山を登るのは一…

うっかり大菩薩峠

峠、野麦峠、小仏峠、大菩薩峠、峠に行こうと思い立ち、どうせなら大菩薩峠、あれこれ調べて、どうもひとりで行くのはアウトドア派ではない私には困難のように感じて、添乗員同行の大菩薩嶺登山日帰りツアーを発見して、嬉々として、あっという間に申し込む…

取って読め

いま、私のまわりで、とっちらかっている本。『神谷美恵子・エッセイ集? ―いのち・らい・精神医療―』(ルガール社) 『生きがいについて 神谷美恵子コレクション』(みすず書房) 『罪と罰の彼岸』(ジャン・アメリー 法政大学出版局) 『「大菩薩峠」を読む…

鉄ちゃんに敬礼

午前七時に新宿駅西口から高速バスに乗り、松本→新島々→上高地着午後一時。上高地帝国ホテルにタッチ&ゴー、午後三時半には白骨温泉行きのバスに乗り、午後四時半過ぎに白骨着。駆け抜ける突風のような小旅行。 ホテルの背後には雪をかぶった穂高。でっかい…

凡庸

ハンセン病がらみの新聞連載原稿に呻吟。気を抜くと、すぐに青臭いことを書くおのれの書生気質に少々手を焼く。ジャン・アメリーは書く。「つまり、どこでもみかける平凡な顔が最後にはゲシュタポの顔になるということ。悪がいかに凡庸さを高めるものか。哲…

考える。

小学校6年生女子(中学受験勉強中)と話をした。 「社会と理科は好き。暗記すればすむから。国語と算数はきらい。考えなくちゃいけないんだもん。考えるのは面倒くさい」。 ふーむ、そうなのか…。でもね、おじょうちゃん、年取ると暗記なんかできなくなって…

5歳の記憶

4歳上の姉と74歳の母と三人で新潟・柏崎の町をそぞろ歩く。47年前、この町の駅前商店街で両親はパチンコ屋をしていた。私にはこの町の記憶は全くない。面白いことに(?)母もほとんど覚えてない。覚えてないというより消去したと言うほうがより正確か。楽…

佐渡

ここ数日間、発熱中。37度台をふらふらと体温が上下。上がるなら上がる、下がるなら下がる、はっきりしてくれないかな……。発熱の仕方まで本人の性格に酷似しているような気がしなくもない。布団にくるまり「佐渡金山」(磯部欣三 中公文庫)を読む。佐渡の歴…

テロ警戒中

11日、菊池恵楓園にハンセン病国賠訴訟の第一次原告団のひとりだった志村康さんを訪ねる。5時間お話を聞いた。強靭な野生の思考の持ち主。久しぶりに乗った単線菊池電車に和む。こんな田舎電車になぜといつも思うのだが、「テロ警戒中」のボスター。明晩帰…