2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「初陣」について  『「日本語」の文学が生まれた場所』黒川創

1935年、プロレタリア文学系の文芸誌「文学評論」に、李兆鳴という朝鮮人の日本語による「初陣」という小説が発表される。 それは、朝鮮窒素を舞台に、そこで働く朝鮮人労働者の厳しい労働の状況と弾圧とその中での連帯の光景を描いたもので、 そのもとにな…

女の言いぶん  『「日本語」の文学が生まれた場所』黒川創

yomukakuutau.hatenadiary.com 2023年12月7日の記事の補足。 近代文学が獲得する「女たちの話体」という見出しのもと、序で以下のようなことを、黒川さんは語る。 「漢字文化圏」としての極東アジアにおいて、漢文という書き言葉の教養は、女性を除外するホ…

『被災物 モノ語りは増殖する』

「前例のない非常識なことが目の前で起きているのに、前例や常識に従って何を伝えることができるのでしょうか。このやり方が既存のやり方に対して喧嘩を売っていることも、タブーを犯していることもわかった上で、それでも、この方法で表現するしかなかった…

闇の奥   

2024年の最初の一冊は、コンラッド『闇の奥』(黒原敏行訳 光文社文庫)。読みなおし。コッポラの『地獄の黙示録』のイメージが強すぎて、それを振り払いながら、 若き頃にコンゴ川をさかのぼっていった老船乗りマーロウが、闇の中で見て聞いて経験したこと…