2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

高秉權(コ・ビョングォン)『黙々  聞かれなかった声とともに歩く哲学』(明石書店) メモ

高秉權。この韓国の哲学者が書くものは、とても好き。 哲学・思想がこの人の体をくぐり抜けると、社会を底から変えてゆく実践と結びついてゆく。小さな声を封じることで成り立つ近代社会を支える人文学ではなく、変革の人文学が見えてくる。 『黙々」は、199…

『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー(河出文庫)

灼熱の砂漠を、車に積まれた鉄製の空の水タンクに潜んで、クウェイトへと密入国しようとする三人の男たち。密入国ブローカーに払えるような大きな金の持ち合わせはない。しかし、クウェイトで職にありついて生きのびたい。 三人の男たちは、車が検問所の手前…

阿波根昌鴻『米軍と農民』  おまけのメモ 伊江島のヤマト由来の民謡 吉田(ゆしだ)  

吉 田 (本調子)〈伝承地:東江上・東江前・阿良〉〔系統:会所踊い系<ヤマト。 踊の構成等:2人 二才踊い衣装。小道具:陣笠、扇をもって踊る 〕 一 吉田のおやじ兼好は アヤリクヌシー さわぐ浮き世に ただつりづり(徒然)と 書いて 残せし文との心中…

阿波根昌鴻『米軍と農民 ー沖縄県伊江島ー 』1973 岩波新書 その2 反骨について

たとえば抵抗する伊江島真謝の農民のひとり、石川清食は、戦前に、指を切って徴兵に抗った者だった。無言の抵抗。指がない理由をずっと言うことはなかった。 土地闘争のなかで、ベトナム戦争の兵役拒否の運動のことを知った者が石川清食のことを想い起こし、…

阿波根昌鴻『米軍と農民 ー沖縄県伊江島ー 』1973 岩波新書 その1

昨年12月に那覇ジュンク堂一階で開催されていた古書市の、ちはや書房の棚で見つけた本。 1955年 米軍が伊江島真謝地区に襲いかかり、家をブルドーザーで潰し、火を放ち、農地を軍用地として強制収用する。 そこから土に根差し、暮らしに根差し、人であること…