私は存在する。

レヴィ・ストロースは言った。
世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。
ともあれ、私は存在する。
 

存在することの歓びのありかを指し示し、語り継ぐものとしての言葉。それを『悲しき熱帯』の最後に読む。
われわれの作り出したあらゆるものよりも美しい一片の鉱物に見入りながら。百合の花の奥に匂う、われわれの書物よりもさらに学殖豊かな香りのうちに。あるいはまた、ふと心が通い合って、折々一匹の猫とのあいだにも交わすことがある、忍耐と、静穏と、互いの赦しの重い瞬きのうちに。