阿房列車でいく。

近々、友人を訪ねて秋田に行く。
秋田・大館フリー切符という、首都圏から秋田方面への行き帰りに新幹線も寝台も乗れて、しかも秋田・大館のエリア内は7日間乗り放題の、なかなかに結構な切符を見つけて、旅心が大いにふくらむ。ならば、行き帰りは寝台特急あけぼのにしよう。夢と一緒に北へと運ばれていこう。内田百輭が乗った横黒線(今の北上線)にも乗ってみよう。百輭みたいに、自分が行こうといったくせに、「何の因果でこんな所をうろうろ」と、不機嫌な顔で呟いて帰ってこよう。わけもなく漂う旅というのをやってみよう。わけありの旅にはもう飽いた、と言ってみたい。

司馬遼太郎街道をゆく28 耽羅紀行」。済州島の旅。ずいぶんと久しぶりに司馬遼の文章を読んだが、言うまでもなく、うまいなと思う、なんだか、その見事なうまさに、丸め込まれそうな居心地悪さを感じる。引っかかったのは、侵攻してくるモンゴルと戦った高麗の農民軍に、早熟な「国民」の意識を見る、その語り口。ここには司馬遼太郎が「国民」というものに寄せる夢が託されているような気がしなくもない、同時に、そういう夢を見つづけた人であったのが司馬遼太郎なのだということに、あらためて気づかされる。


昨夜読んだ本の中の言葉。
「人が人を互いに絶対的に信じるということ、それは究極的には、運命を共にする者たちの間でのみありうること」(『あなたたちの天国』李清俊)

運命を共にする、か……。

さて、いよいよ本腰入れて、翻訳の仕事。


そうそう、阿房列車のルートは、こうなる。

上野→(東北本線)→大宮→(高崎線)→高崎→(上越線)→水上駅長岡駅→(信越本線)→新津→(羽越本線)→新発田村上駅あつみ温泉→鶴岡→余目→酒田→遊佐→象潟→仁賀保羽後本荘秋田駅→(奥羽本線)→横手→(北上線:旧横黒線)→ほっとゆだ→横手→秋田