2021-08-06から1日間の記事一覧

森鴎外『山椒大夫』  気になる枝葉の言葉  メモ

① 信者 向うから空桶からおけを担かついで来る女がある。塩浜から帰る潮汲しおくみ女である。 それに女中が声をかけた。「もしもし。この辺に旅の宿をする家はありませんか」 潮汲み女は足を駐とめて、主従四人の群れを見渡した。そしてこう言った。「まあ、…

8月6日 原民喜の詩を読む    黙祷

碑銘遠き日の石に刻み 砂に影おち崩れ墜つ 天地のまなか一輪の花の幻 風景水のなかに火が燃え夕靄のしめりのなかに火が燃え枯木のなかに火が燃え歩いてゆく星が一つ 悲歌濠端の柳にはや緑さしぐみ雨靄につつまれて頬笑む空の下水ははつきりと たたずまひ私の…