コリアン・ディアスポラと文学 ~流転、追放、ジェノサイド、そして記憶の物語り~ 

コリアン・ディアスポラと文学 ~流転、追放、ジェノサイド、そして記憶の物語り~ @2024年3月3日 九州大学韓国センター 今日は3月3日。2日前の3月1日は、韓国では3・1節。 3・1独立運動の発端となった独立宣言文が読まれた日です。 この独立運動が植民地権…

パレスチナと私たちの小さな歌

GAZAの人びとが歌い踊るのを見た。 踊る少女を見た。 You can't break the Palestinian spirit! pic.twitter.com/qjxwb2dR7t — Censored Men (@CensoredMen) 2023年12月27日 ノルウェーの人びとが、GAZAに心を寄せて、パレスチナ国歌を歌うのを見た。 Norw…

作家キム・ヨンスと詩人白石と詩人金時鐘と詩人キム・ソヨン

キム・ヨンス『七年の最後』(橋本智保訳 新泉社)を読んだ。 これは、北朝鮮の体制の中で、ついに、詩を書かないことで自身の文学を全うした詩人白石の、詩を書かなくなる最後の7年を描く物語であり、キム・ヨンス自身の文学観が語られている物語でもある。…

詩 「新しい世界にようこそ」

新しい世界にようこそ 人知れず無数の獣が大地を蹴って躍るとき、ひそかに世界が変わるということを、あなたは知ってる? この世の涯の密林の奥で、ほかの誰に知られることなく、この世が災厄にのまれぬよう、かがり火焚いて夜を徹して輪になって踊る歌の祭…

森崎和江。言葉。メモ。

私は政治的に朝鮮を侵略したのではなく、より深く侵していた。朝鮮人に愛情を持ち、その歴史の跡をたのしみ、その心情にもたれかかりつつ、幼い詩を書いて来たのである。 自然界といのちとのシンフォニーへの愛をはぐくんでくれたのが「日帝時代」の大地であ…

2021年師走  西成・ココルームでもう一個 詩を書く

お題は「箱」です。 まず、そのお題をいただいてから、絵を描きます。2分で。 二人一組になって、相手の描いた絵を見ながら、インタビューします。6分で。 私もインタビューされます。6分。 そして、互いに、相手から聞き取った物語を、詩にします。タイトル…

「女」であること  恨百五十年  ~2021年師走に~

今日、2021年12月11日は、大阪・西成 ココルームで、煤払い 詩の朗読会 ライターの社納葉子さん、ココルームの上田 假奈代さんと三人で、釜ヶ崎芸術大学の皆さんに囲まれて、年末に人生の煤払いをしようということで、あれこれ語り合いました。 そのなかで読…

今日、釜ヶ崎、ひと花センターで。

ココルームを主宰する詩人 上田假奈代さんの詩のワークショップに参加。 cocoroom.org 二人一組、 お題は「みかん」で、 最初に「みかん」という言葉に思い浮んだ絵を2分くらいで下手くそに描いて(これ大事)、 その絵を手掛かりに互いに5分くらい、みかん…

ベンヤミン「新しい天使」    メモ

――これから進む道のための書き抜き―― 瓦礫 「新しい天使」と題されたクレーの絵がある。そこには一人の天使が描かれていて、その姿は、じっと見つめている何かから今にも遠ざかろうとしているかのようだ。その眼はかっと開き、口は開いていて、翼は広げられ…

8月6日 原民喜の詩を読む    黙祷

碑銘遠き日の石に刻み 砂に影おち崩れ墜つ 天地のまなか一輪の花の幻 風景水のなかに火が燃え夕靄のしめりのなかに火が燃え枯木のなかに火が燃え歩いてゆく星が一つ 悲歌濠端の柳にはや緑さしぐみ雨靄につつまれて頬笑む空の下水ははつきりと たたずまひ私の…

「生の悲しみ」 (『声 千年先に届くほどに』ぷねうま舎 より) 韓国語版

「생(命)의 슬픔(生の悲しみ)」 (原文日本語 韓国語訳:金利真) 사람은, 외로움도 슬픔도 아픔도, 결코 메워낼 수 없어서, 다만 한 가지 가능한 것은, 존재의 외로움, 존재의 슬픔을 함께 바라보고, 함께 있는 것 일테지. 존재의 심(芯)에 머무는 외로움…

森崎和江  不穏な詩

妣(はは) 桃太郎 風車が赫いね 西のそらに いちめんにまわっているよ みえないのかい そうかい 血の海さ 遊女 つばを吐いて とび散ったほうへ歩く 風がないね 虫 たとえば紫宸殿の 即位の秘儀 その観念をかぜにさらし水にさらし つみくさの丘にすわる たと…

詩「ほねのおかあさん」森崎和江  <産むことの思想>をうたう  メモ

森崎和江の身体感覚と言葉への感性。あまりにも鋭敏な感覚。 森崎和江の世界は言葉にならない欠如に満ちている。その欠如を生き抜いていくには、言葉が必要、思想が必要、切実に必要。 それは、はじまりの言葉であり、はじまりの思想になるほかはない。 ある…

「居場所を失くしたカミサマたちの歌」

「居場所を失くしたカミサマたちの歌」 悪いことをしたらカミサマのばちがあたるというけれど、 問題はそのカミサマがどこにいるかということでして、 まだ私がタンポポの花やテントウムシくらい小さかったころに、 おばあちゃんがそう言って教えてくれたこ…

「桜の木の下で」 (溝口トヨ子ちゃんのテーマ) 5月15日トヨ子ちゃんへの祈りの大芸能祭@水俣・相思社のために

「桜の木の下で (溝口トヨ子ちゃんのテーマ)」 (「リンゴの木の下で」のメロディで) 桜の木の下で 今日もまた会いましょう たそがれ 赤い夕陽 海に沈むころに 楽しく輪になって みんなで歌いましょう 思い出す かわいいあの子 桜の木の下で

「居場所を失くしたカミサマたちの歌」

悪いことをしたらカミサマのばちがあたるというけれど、 問題はそのカミサマがどこにいるかということでして、 まだ私がタンポポの花やテントウムシくらい小さかったころに、 おばあちゃんがそう言って教えてくれたことには カミサマはどこにでもいる 山にも…

文学の秘密を語る声。/『越境広場』第7号 中村和恵「ほおろびに身を投じる――エドゥアール・グリッサン『第四世紀』に見出すモルヌの風とカリブ海のもうひとつの歴史/物語」

『越境広場』第7号。女の声が強く響く『サルガッソーの広い海』(ジーン・リース)と『第四世紀』(エドゥアール・グリッサン)を対比させつつ、カリブ海の作家たちの「もうひとつの物語」を見渡しつつ、正史のなかには存在しない口承的記憶と文学について語…

水俣・乙女塚 塚守だった故砂田明さんの詩「起ちなはれ」(作・砂田明)の語りを、砂田エミ子さんに聞いていただくために水俣へ。

そもそもは、鳥獣虫魚草木、すべての生者、死者が集う鎮魂と芸能の場として開かれた乙女塚、 1993年に砂田明さんが亡くなってから、だんだんと静まりかえっていった乙女塚、 そこで、いまいちど、芸能祭をしよう、みんなで歌い踊ろう、砂田さんの詩を語って…

今日読んだ詩 

ぼくが水を聴いているとき ぼくは 水であった ぼくが樹を聴いているとき ぼくは 樹であった ぼくがその人と話しているとき ぼくは その人であった それで 最上のものは いつでも 沈黙 であった ぼくが水を聴いているとき ぼくは 水であった (山尾三省「水」…

本を読みつつ、雑感。

「希望なき人々のためにこそ、希望は私たちに与えられている」 by ヴァルター・ベンヤミン 「神話の呪縛を断ち切りながら瓦礫の山を掘削する思考が、「忘れがたい」生の記憶を探り当て、それを今ここに呼び覚ます像に結晶するとき、時代の闇を貫く道を切り開…

 島々の教え  〜けえらんねえら 唄いじょうら!〜

現代詩手帖に寄稿しました。

 いつの世も都市生活は、歌謡を求める。

と、『歌舞伎以前』(岩波新書)の「黄金世界」の章で、林屋辰三郎は、安土桃山黄金世界の繁栄の中、堺の町衆に象徴される武家や公家の世界とは異なる、人間的欲求を自由に放縦に歌う歌謡が現れたと語る。たとえば、町衆の愛唱歌とされる「閑吟集」(1518年…

勝手に相聞歌 その1 金子光晴と

「もう一篇の詩」 金子光晴 (『人間の悲劇』より)恋人よ。 たうたう僕は あなたのうんこになりました。そして狭い糞壺のなかで ほかのうんこといっしょに 蠅がうみつけた幼虫どもに くすぐられてゐる。あなたにのこりなく消化され、 あなたの滓になって あ…

夢を見ました。

逃げても逃げても追いかけてくる影だけの男に追われて、とうとう見知らぬ海辺の町へと落ちていきました。 小さな町でした。海辺はにぎわっていました。砂浜ではなく、護岸に守られた浅い海でした。 ところどころなめらかな岩がゆるやかに突きだしている穏や…

★詩、ひとつ。

[[「晩秋」 塔和子]] あなたは 私のために何をしてくれたか 心のうつろを埋めてもくれなかった 心の寒さもひきむしってはくれなかった けれども居ることによって 安らいをもたらせてくれた 大地の上に共に居るという 安心感を与えてくれた 私はあなたのため…