詩
『越境広場』第7号。女の声が強く響く『サルガッソーの広い海』(ジーン・リース)と『第四世紀』(エドゥアール・グリッサン)を対比させつつ、カリブ海の作家たちの「もうひとつの物語」を見渡しつつ、正史のなかには存在しない口承的記憶と文学について語…
そもそもは、鳥獣虫魚草木、すべての生者、死者が集う鎮魂と芸能の場として開かれた乙女塚、 1993年に砂田明さんが亡くなってから、だんだんと静まりかえっていった乙女塚、 そこで、いまいちど、芸能祭をしよう、みんなで歌い踊ろう、砂田さんの詩を語って…
ぼくが水を聴いているとき ぼくは 水であった ぼくが樹を聴いているとき ぼくは 樹であった ぼくがその人と話しているとき ぼくは その人であった それで 最上のものは いつでも 沈黙 であった ぼくが水を聴いているとき ぼくは 水であった (山尾三省「水」…
「希望なき人々のためにこそ、希望は私たちに与えられている」 by ヴァルター・ベンヤミン 「神話の呪縛を断ち切りながら瓦礫の山を掘削する思考が、「忘れがたい」生の記憶を探り当て、それを今ここに呼び覚ます像に結晶するとき、時代の闇を貫く道を切り開…
現代詩手帖に寄稿しました。
と、『歌舞伎以前』(岩波新書)の「黄金世界」の章で、林屋辰三郎は、安土桃山黄金世界の繁栄の中、堺の町衆に象徴される武家や公家の世界とは異なる、人間的欲求を自由に放縦に歌う歌謡が現れたと語る。たとえば、町衆の愛唱歌とされる「閑吟集」(1518年…
「もう一篇の詩」 金子光晴 (『人間の悲劇』より)恋人よ。 たうたう僕は あなたのうんこになりました。そして狭い糞壺のなかで ほかのうんこといっしょに 蠅がうみつけた幼虫どもに くすぐられてゐる。あなたにのこりなく消化され、 あなたの滓になって あ…
逃げても逃げても追いかけてくる影だけの男に追われて、とうとう見知らぬ海辺の町へと落ちていきました。 小さな町でした。海辺はにぎわっていました。砂浜ではなく、護岸に守られた浅い海でした。 ところどころなめらかな岩がゆるやかに突きだしている穏や…
[[「晩秋」 塔和子]] あなたは 私のために何をしてくれたか 心のうつろを埋めてもくれなかった 心の寒さもひきむしってはくれなかった けれども居ることによって 安らいをもたらせてくれた 大地の上に共に居るという 安心感を与えてくれた 私はあなたのため…