願い

開高健の『人とこの世界』(ちくま文庫)を読み始める。しょっぱなから面白すぎる。広津和郎との座談と、それにまつわる開高の独り言を書き綴った「行動する怠惰」、これを読んだら、「不精者で、万年床が好きで、あまり本を読まず、小説を書くのがおっくうでならず、できるかぎりフトンのなかでウトウトしていたい人物らしい」広津和郎がたまらなく好きになる。そうか、それでいいのか、と大いに励まされたような気分になる。広津和郎ならぬ自分が、そうであっていいわけがないのであるが……。

開高曰く「事物の核心はときには事物そのものよりも、そのまわりに漂う匂いのようなもののなかにある。眼のいろや声にそのような匂いを匂わせることのできる人がいる。広津さんがそういう人だ」。

サウイフモノニ ワタシハ ナリタイ