ペドロ・アドモドバル 「ボルベール 帰郷」  慎ましい希望

ペドロ・アドモルバル『ボルベール 帰郷』

女たちは生と死のあわいを、けなげに、必死に、たくましく生のほうへと生きていくのだけれど、
その生きている姿というのは、実に可笑しみもあるもので、人の世はそんな生と死で織り上げられ、哀しみと可笑しみは果てしなく繰り返され……。
そして、哀しみと可笑しみを生きるひとりひとりが「話したいことがたくさんあるの」と大事な人に囁きかける。
本当に話すかどうかは別として。

風と色と匂いと歌と秘密と沈黙と女たち。

劇中、アルゼンチン・タンゴ『ボルベール(帰郷)』のフラメンコ版をペネロペ・クルスが歌う。
(ただし、吹き替え。歌声はスペインのフラメンコ歌手エストレージャ・モレンテのもの)。

http://www.youtube.com/watch?v=FDDx0Y7T4g8

<帰郷>

彼方に見える星のまたたきが
遙かな故郷に私を導く

再び出会うことへの恐れ
忘れたはずの過去が蘇り
私の人生と対峙する

思い出に満ちた多くの夜が
私の夜を紡いでいく
旅人はいくら逃げても
いつか立ち止まる時が来る

たとえ忘却が全てを打ち砕き
幻想を葬り去ったとしても
慎ましい希望を抱く
それが私に残された心の宝

帰郷(ボルベール)

しわの寄った顔
歳月が積もり銀色に光る眉

感傷…

人の命はつかの間の花
20年はほんの一瞬

熱をおびた目で
陰の中をさまよいお前を探す

人生…

甘美な思い出にすがりつき
再び涙にむせぶ

音楽(サントラ作曲): アルベルト・イグレシアス
主題歌歌手: エストレージャ・モレンテ


※本日、熊本日日新聞にての連載『ミナマタからハンセンへ』全十回完結。
全文は、こちらに。 ↓
http://wild-krystall.jimdo.com/