「ヴォイツェク、貴様は善人だよ、善人――だがな、ヴォイツェク、貴様にはモラルってものがないぞ!」 (大尉)
「我々は貧乏人であります。よろしいですか、大尉殿、金、金なんであります。」
「よろしいですか、自分らのような低級な人間には徳は持てないのであります」(ヴォイツェク)
「この世の片隅にしか住む所がなくても、鏡のかけらしか持ってないあたしみたいな女でも、唇はこんなに赤いんだわ」
「ああ、なんて世の中なの? 何もかも破滅してしまえばいい、男も女も」
(マリー)
実験動物ヴォイツェク (医者)
「ノーがあるのはイエスのせいなのか、イエスがあるのはノーのせいなのか、こいつをひとつ自分でじっくり考えてみたいのであります」
「人間は誰でも深い淵だ、覗き込むとめまいがする」(ヴォイツェク)
「俺は眠れないんだ、目を閉じると、踊りがぐるぐる回り続けて」(ヴォイツェク)
ヴォイツェクという狂気の存在に、
私がいままで出会った狂気の中でも、「三大狂気」は何かな、
と記憶を探る。
おもかさま 石牟礼道子の祖母
堂守モシェ エリ・ヴィ―ゼル『夜』
一遍 言わずと知れた狂乱の踊り念仏
この三大狂気は、三大正気でもあるね、きっと。