藤本和子
北に向かうのは、そこが荒蝦夷の地だから。と言ってしまうとあまりにざっくりしすぎか。 近代国家がそのよりどころとした建国神話において、きれいに封じ込められた「いのち」の原風景をそこに見たからと言うべきか。 北に向かう旅は、森崎和江の長きにわた…
「記憶できないほど愚かになったから書くのよね」 と、トニ・モリスンは言ったという。 同時に、また、トニ・モリスンは国でも州でもない、共同体や町についての細かいこと、雰囲気、手ざわりについて語ったという。それは黒人女性がそこで生きて、根を生や…