森崎和江

森崎和江。言葉。メモ。

私は政治的に朝鮮を侵略したのではなく、より深く侵していた。朝鮮人に愛情を持ち、その歴史の跡をたのしみ、その心情にもたれかかりつつ、幼い詩を書いて来たのである。 自然界といのちとのシンフォニーへの愛をはぐくんでくれたのが「日帝時代」の大地であ…

國分功一郎『中動態の世界』  メモ

なぜ「中動態」の本を読むのかと言えば、 「私」という「一人称」を森崎和江の問いがずっと、私の胸の奥深いところに刺さっているから。 妊娠出産をとおして思想的辺境を生きました。何よりもまず、一人称の不完全さと独善に苦しみました。(中略) ことばと…

森崎和江 『慶州は母の呼び声』 メモ

これは、森崎さんにとっての『あやとりの記』なのであり、『苦海浄土』なのだと思った。 失われた「はは(オモニ)のくに」の記録。痛切。哀切。 ◆唄の記憶、ひとつ。 先に行くのはどろぼうだよその次はヤンバンサラムあとから行くのはシャンヌム いつごろ生…

「生む・生まれる話」(『ふるさと幻想』所収) メモ

これは松本健一への公開書簡。 こんな手紙を送られた松本健一は鳥肌が立つほど震えただろうなぁ、と思う。 いきなりこんな言葉が書きつけられる。 私は、もの書きになってしまいましたが、書きことばによる表現ぬきに生きることができなかったからで、もの書…

森崎和江「ノン・フィクションとしての民話」(『詩的言語が萌える頃』所収)  メモ

これはすごいエッセイだと思う。 冒頭に森崎和江の見つづけてきたこの世の風景が語られる。 まるで大きな肉体のように関連としていた社会が崩れ、ひとりひとりの人間たちが、名づけようもないほどとりとめのない個体となるさまを、私はこれまで二度、みて来…

森崎和江  不穏な詩

妣(はは) 桃太郎 風車が赫いね 西のそらに いちめんにまわっているよ みえないのかい そうかい 血の海さ 遊女 つばを吐いて とび散ったほうへ歩く 風がないね 虫 たとえば紫宸殿の 即位の秘儀 その観念をかぜにさらし水にさらし つみくさの丘にすわる たと…

詩「ほねのおかあさん」森崎和江  <産むことの思想>をうたう  メモ

森崎和江の身体感覚と言葉への感性。あまりにも鋭敏な感覚。 森崎和江の世界は言葉にならない欠如に満ちている。その欠如を生き抜いていくには、言葉が必要、思想が必要、切実に必要。 それは、はじまりの言葉であり、はじまりの思想になるほかはない。 ある…

森崎和江『異族の原基』 メモ2

人は、人のままに言葉を持つ権利がある。 by森崎和江

森崎和江『異族の原基』 メモ1

「非政治的基底からの共闘」(70年9月『現代の眼』所収) 閉山した筑豊の炭坑の元坑夫たちが流浪の労働者として流れ込んでいった北九州・八幡製鉄所での労働組合運動をめぐって、 北九州を拠点とする「沖縄を考える会」の活動をめぐって、 「考える会」が打…

森崎和江『北上幻想』 メモ

北に向かうのは、そこが荒蝦夷の地だから。と言ってしまうとあまりにざっくりしすぎか。 近代国家がそのよりどころとした建国神話において、きれいに封じ込められた「いのち」の原風景をそこに見たからと言うべきか。 北に向かう旅は、森崎和江の長きにわた…

牛頭天王、まつろわぬ神のイメージ 『牛頭天王島渡り』祭文より メモ

牛頭天王に宿を貸すことを断ったために滅ぼされる蘇民古端は釈迦の弟子で、 古端の家を襲った牛頭天王と釈迦の間で問答が繰り広げられる。 そして―――― その時釈迦仏聞こし召し、 「いかなる魔王・鬼神にてましますぞ。 仏の御弟子まで悩ます事不審なり」と宣…

牛頭天王と十一面観音 『牛頭天王島渡り」祭文より メモ

奥三河 東栄町に残る「牛頭天王島渡り」祭文のうち、 牛頭天王の子である八王子の第八番目 蛇毒気神の物語に驚かされる。 竜宮から日本へと向かう牛頭天王の一行(妻の薩迦陁女、七人の王子、8万4千の眷属ら)を赤き毒蛇が波をかきわけ追いかけてくる。 赤き…

森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』 メモ2  内発性をめぐって。

この本はを読むのは15年ぶりで、 その15年間は私自身の旅の作法、人びとの向き合い方、生き方を 大きく変えてきた15年でもあった。 だからだろう。 まるで、初めて読む本のようにして、この本を読む。 かつて文字で追って頭で理解した(と思っていた)ことと…

森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』 メモ

<はじめに>から なぜ森崎和江は果てしなく旅をしたのか……。 「私はぬきさしならなくなっているだけである。引きかえすすべがなくなっている。」(森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』はじめに より) 思わず、「あっ」と小さな叫びをあげて、息をのんで…

言葉   森崎和江

私たちの言葉は、まだその闇へ到達できておりません。 (『ははのくにとの幻想婚』所収「地の底のうたごえ」より) 性が単独な機能ではないのに、女の性は生誕を具象としてもち、男の性は生誕を抽象とします。困ります。なぜなら具象の力とはたいへんなもの…

森崎和江  詩をめぐって

詩とは、自然や人びととのダイアローグだと、幼い頃から思ってきました。人っていうのは、自然界の中で、鳥や、みみずや、蟻なんかと一緒に生きているわけでしょ。小さい時、私はいつも、詩や絵を描いて遊んでいたけれど、それは、天然、自然とのダイアロー…

森崎和江 産みの思想  メモ

「産み・生まれるいのち」より 死について古来人びとはさまざまに考えてきているのに、産むことについてなぜ人間は無思想なのだろうと、若い頃から疑問に思ってきました。死は個人にとって、個としての生活を完結させます。これにたいして、産むことは個に限…

森崎和江『まっくら』メモ

出発点。 <はじめに>より 私には、それとも女たちは、なぜもこうも一切合財が、髪かざりほどの意味も持たないのでしょう。 愛もことばも時間も労働も、あまりに淡々しく、遠すぎるではありませんか。なにもかもがレディ・メイドでふわふわした軽さがどこま…