天湖

石牟礼道子『天湖』を読んでいる。山の神と海の神との結ばれを語り、神々の息づく世界に、神をなくした人間をふたたび迎え入れようと、その道を開こうとする物語。それにしても石牟礼さんはよく歌う。

ここなるは/天の 底なる/おん旅所/浅き月をば/まねくとて/山々 わたる/花 すすき/ 
沖の宮より/青貝姫/
山の神とは/申すやな/天の 底なる/湖の主

千里の道を/見えたれば/千草 かずらも/もみじして/錦も 綾と/なりにける/いざ 手にとりて/千年の すすき/ひともと 奉る


歌が無明の明かりとなる。歌が無明の底に湧きいずる水となる。心に泉。それを呼び出そうとする物語。