2023年6月24日 石垣島 未来の戦跡地めぐり

奥に見えるのは、沖縄で最も高い山であり、石垣島の聖なる山でもある

於茂登岳

その前の小さな山なみを挟んで、手前に見える薄い緑の敷地に立つ建物群が、

自衛隊駐屯地」

 

 

バンナの南の島展望台から、駐屯地をあらためて見る。

前方、やや左手の山のふもと、緑が削られている場所。

 

当該部分を少し拡大。

 

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駐屯地からカメラを左に振れば、すぐに青い海。西表島が見える。

 

 

 

準天頂衛星システムの地上施設

石垣島宮古島久米島、沖縄恩納村種子島には、すでに日本版GPSと言われる「みちびき」=準天頂衛星システムの地上施設がある。システムが完成すれば、ミサイルの誘導精度が向上すると言われている。

参考〕

内閣府による「みちびき」(=準天頂衛星システム)の解説。

週刊金曜日(4月13日 1180号)目次より

  • 【南西諸島】
    宇宙の軍備拡張が招く南西諸島のミサイル戦争
    前田佐和子

    南西諸島での急激な軍備の増強は、地上や海上だけで進められているものではない。宇宙でも、日本政府は米国の宇宙戦略に沿う形で軍備拡張を進めている。特に、主に南西諸島に設置された測位衛星の管制局は、この地域でのミサイル戦争に備える危険なものだ。

 

 

PAC3部隊

サザンゲートブリッジを渡って少し行くと、港湾機能のある埋め立て地「南ぬ浜町(ぱいぬはまちょう)」にPAC3部隊が配備されている。

 

 

ループアンテナ  白保与那原(空港手前)

「我が国のラジオ放送等に妨害を与える電波の発射位置を確認するための電波方位施設」総務省管轄

 

 

 

【参考】 

琉球新報

陸自の石垣駐屯地きょう開設 570人配置、

ミサイルも配備へ 住民説明会は開設後に 沖縄

於茂登連山の麓に開設される陸上自衛隊の石垣駐屯地。開設を前に車両が運び込まれている=13日、石垣市(小型無人機で撮影)

 防衛省自衛隊は16日、沖縄県石垣市平得大俣で2019年から整備を進めてきた陸上自衛隊石垣駐屯地を開設する。「南西地域の陸自部隊の空白を埋める」として政府が南西諸島で進めて来た一連の駐屯地新設事業は最終段階を迎えた。駐屯地に配備されるのは地対空、地対艦ミサイルなど。地対艦ミサイルは敵基地攻撃能力(反撃能力)を備えた改良型に更新される可能性がある。部隊の増強や補給拠点の整備、米軍との協力深化など、今後も県内でさらなる防衛体制の強化は続く見込みだ。

▼【図でわかる】南西諸島で進む自衛隊配備、止まらぬ軍事化

 石垣駐屯地は、政府が7日の閣議で、16日に開設すると正式に決定した。16日は新編される八重山警備隊の編成完結行事が駐屯地の同部隊内で行われる。報道公開はない。開設記念行事は4月2日、地元関係者らを招いて開催予定という。

 石垣駐屯地にはいずれも九州から移駐する第303地対艦ミサイル中隊(約60人)と第348高射中隊(約70人)、八重山警備隊(約340人)が配備される。駐屯地業務や会計を担う部隊も含め、全体で約570人が配置される。車両約200台を保有する。

 開設に先立ち陸自は2月末から島に車両を運び込み、今月5日には約150台を駐屯地に搬入した。

 駐屯地開設後の18日にも12式地対艦誘導弾(ミサイル)、03式中距離地対空ミサイル、警備隊が扱う中距離多目的ミサイルや81㍉迫撃砲などの弾薬が搬入される見通しだ。

 一方、駐屯地開設後の22日に、石垣市と沖縄防衛局、駐屯地が住民説明会を開く。住民理解を得る取り組みは道半ばだ。

 石垣市への陸自配備を巡っては防衛省が15年11月に平得大俣への配備計画を市に正式に打診した。

 市民の賛否は割れ、18年12月には市住民投票を求める会が有権者の3割を超える1万4263筆の署名を集め、陸自配備の賛否を問う住民投票を直接請求した。だが市議会で請求が否決されるなどして、現在も実施されていない。

(知念征尚、明真南斗)

 

 

東京新聞記事 2023年6月23日

23日は「慰霊の日」。沖縄戦で命を落とした人々をしめやかに追悼する日だが、対照的な「波」が沖縄に押し寄せている。見過ごせないのが石垣島の状況だ。自衛隊北朝鮮対応で地対空誘導弾パトリオットPAC3)を配備するに当たり、駐屯地ではなく、民間用の港湾地区に展開したのだ。市民の日常に浸食する試みは、どんな波紋を呼んだのか。(中沢佳子、木原育子)

◆展開先は、新設された駐屯地の外

 「このままずっと置くことだってありうる。市民には大きな負担だ」。石垣市南ぬ浜(ぱいぬはま)町の新港地区に物々しく置かれたPAC3。花谷史郎市議が不安視する。
 石垣には3月、陸上自衛隊の駐屯地が新設された。しかし自衛隊は駐屯地外の港湾にPAC3を並べた。
 花谷市議が会長を務める「市議会野党連絡協議会」は今月16日、石垣駐屯地に早急な撤去を申し入れたが、音沙汰はない。「旅客船が入り、海外から訪れる人も多い港。PAC3を見せつければ、危険な場所と印象づけるようなものだ」

◆展開先には旅客船ターミナルや人工ビーチ

地対空誘導弾パトリオット(PAC3)

地対空誘導弾パトリオットPAC3

 浜田靖一防衛相は4月、北朝鮮が計画する「軍事偵察衛星」の発射と日本領域への落下に備え、自衛隊に破壊措置の準備を指示し、5月には破壊措置命令を発出。沖縄県内ではPAC3の展開を進めた。
 PAC3は、飛来してくる弾道ミサイルを地上から発射した迎撃ミサイルで撃墜する。レーダーや発射機を備え、車両で移動でき、航空自衛隊が運用する。
 今回の配備先は石垣島与那国島宮古島沖縄本島の計4カ所。石垣駐屯地に運び込まれたPAC3は他の3カ所と違い、民間向け港湾へ移された。
 市港湾課によると、配備先の新港地区は旅客船ターミナルやマリーナ、人工ビーチ、石油・ガス関連施設の集約地、物流拠点など、さまざまな機能を持つ。
 担当者は「年70回は旅客船が寄港する見込みで、PAC3の配備は管理上好ましくもない。寄港のない間だけ認めた」と述べる。当初は旅客船ターミナルそばに配備されたPAC3は18日、船の寄港に伴い人工ビーチ近くに移った。

防衛省は「総合的に勘案」と言うけど…

 なぜ配備先が新港地区なのか。防衛省は「地元自治体等とも調整の上、総合的に勘案して決定しています」と答えるにとどまった。
 県基地対策課によると、沖縄防衛局からは5月29日に「石垣の駐屯地が工事中のため、外に配置する」と連絡があった。石垣市によれば、新港地区のほとんどが国有地という。
 冒頭の花谷市議は「あそこは市民の暮らしに必要な日用品や食料が荷揚げされ、市内へ配送されていく物流拠点。そばに大型の燃料貯蔵施設もある。生活や安全への影響を不安に思う市民も多い」と語る。
 港湾労働者もたまらない。「朝起きたら目の前にミサイル。そんな気持ちだ。何も知らされず、突然持ち込まれた」。全日本港湾労働組合沖縄地方本部の山口順市執行委員長は憤る。
 同本部は安全が脅かされるとして、組合員の自宅待機を検討。防衛省側にも撤収を求めた。「回答は今もない。こちらはいつでも待機をかけられる構えだ」

 22日の時点でまだ、PAC3は居座っていた。ミサイル配備に反対する長浜信夫市議は「駐屯地のそばに山がある。PAC3のレーダーが全空を捕捉できず、外に置きたいのでは」と推測。「市民の目に触れる場所にミサイルを置き、日常の風景にして慣れさせる。そんな意識で配備を続けているのではないか」

◆平時から有事に備える「地ならし」なのか

 新港地区がある南ぬ浜町では、過去にもPAC3配備があった。2012年と16年に北朝鮮が「衛星」と称して飛翔ひしょう体を発射した際にも展開された。
 ただ今回は重く捉えるべき事情もある。昨年末改定の安保関連3文書で民間港湾を活用すると明記されたからだ。「有事の際の対応も見据えた空港・港湾の平素からの利活用に関するルール作り等を行う」とある。
 沖縄国際大の野添文彬准教授(国際政治学)は「中国のミサイル増強で米軍基地や自衛隊基地が容易に攻撃される可能性を念頭に、できるだけ兵力を分散し、米軍基地以外でも使えるようにしたいのだろう」と語る。
 特に石垣の民間港湾の役割は大きいとみる。今月には米軍艦が寄港する計画もあった。台風で延期になったが「台湾有事をにらみ、地理的に近い石垣島は一種の拠点的な役割を担うのでは」と危ぶむ。
 さらに「日本政府は本州や九州、南西諸島に部隊を展開しなければならない状況を想定している。平時からその展開のための訓練とも取れる機会は今後、ますます増えるだろう」とし、「平時から有事に備える一種の地ならし。平時と有事の境界線がさらに曖昧になっていく」と続ける。

◆台湾有事に巻き込まれる不安

18日、北京の釣魚台迎賓館を歩く米国のブリンケン国務長官(中)と中国の秦剛国務委員兼外相(右)=AP

18日、北京の釣魚台迎賓館を歩く米国のブリンケン国務長官(中)と中国の秦剛国務委員兼外相(右)=AP

 沖縄県内では、台湾有事の飛び火を懸念する人が多い。沖縄タイムスなどの世論調査では、台湾をめぐる米中間の武力衝突に沖縄が巻き込まれる不安について「大いに感じる」「ある程度感じる」と回答した割合が85%を超えた。
 一方で米中間の緊張感は緩む気配は乏しい。今月19日には米国のブリンケン国務長官が訪中し、習近平国家主席らと面会したが、台湾問題や経済安保で対立を回避する道筋までは見えてこない。20日に演説したバイデン大統領は、習氏を「独裁者」と呼び、早くも物議を醸した。
 果たして、どう備えるべきなのか。
 東京工業大の川名晋史教授(国際政治学)は「有事がぶっつけ本番では、それこそ地元に被害が生じるのではないか。そういった事態を防ぐために自治体とどう調整し、どこに配備するか事前に決めておいた方がよい」との見方を示す。
 「中国に対する備えだと表明しにくい面もあるが、及び腰でいても事態は好転しない。ごまかさず、地元自治体との戦略的な対話も必要になっている」と事前説明の必要性を説く。

専守防衛を変えるなら「やられるかもしれない」

 ぬぐい去ることができない懸念もある。
 危機に乗じるようにして国が過度に備えを強める事態を危惧するのが、琉球大の島袋純教授(行政学)。
 「専守防衛のミサイルから、敵基地攻撃能力を持つミサイルに変えるなど、むきになってやれば他国の警戒心を非常に高め、沖縄がやられるかもしれない」
 そんな状況だからこそ、国による独断専行型の意思決定を問題視する。
 「軍事や防衛は国の専権事項といって、無理に進めていくことは、法に定められた個人の生存権の保障や自治権をないがしろにする行為で、法の支配に背く」
 島袋氏は昨今の国の姿勢について「ダブルスタンダードとしか思えない」と憤る。新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を巡る秋田県山口県での配備計画は撤回されたが、沖縄県は依然、多くの基地負担が強いられている。
 「台湾有事が起きた際、沖縄だけが出撃地になり、戦場になるような想定は、ばかげている」
 こうした事態に歯止めをかけるため「沖縄の自己決定権を前提に、沖縄の同意がなければ軍事拠点化をできない仕組みをつくることが重要になる」と訴える。

◆デスクメモ

 民主主義は、さまざまな立場の人々が率直に意見を出し合い、丁寧に誤りをただす過程も含む。「行き過ぎ」を防ぐ上では、民主主義の根幹をなす「議論」が有効なはずだ。「国防は国の専権事項」とばかりに広く議論するのを怠っては困る。「民主主義陣営の一員」とも名乗れなくなる。(榊)