2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

絵本『나무도장』( 『木のはんこ』)

この絵本に登場する「彼ら」には、瞳がない。体も輪郭しかない。時には「彼ら」の体は透けて、むこう側が見えそうでもある。 「彼ら」は、済州島4・3事件の渦中の人びととして、絵本『木のはんこ」の中で描かれる。 済州4・3。それは、アメリカを後ろ盾…

水。なのだな。

流れる水。 新しい世界への水路。ル・クレジオ『ラガ』。訳者の管啓次郎さんが、こんなことを書いている。「文学の大きな役割が、世界を重層的に想像することの手助けだとしたら、そして追いつめられ窒息しそうな人々の別の生き方、別の世界のあり方をしめす…

今日の言葉

聴取することが思考することでありつづけるためには、語られざるものが必要なのです。あるいは真理(あるいは神の言葉)が聴くものを憔悴させないためには、言葉はまた語られざることでみなければならないのです。レヴィナス『聖句の彼方』より。

つた、つた、つた  死者の呼び音。

つた、つた、つた。二上山に葬られた死者(大津皇子)は、それが大津皇子とも知らず、二上山に浮かび上がるその俤に引き寄せられて、奈良の都から葛城の当麻寺まで漂い出て、当麻寺のわきの廬堂にこもった藤原の郎女(中将姫)を訪う。死者の呼び声に応える…