2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『旅行記』前・後編(佐藤貢 iTohen PRESS)

昨日、下北沢のB&Bで購入して、深夜から軽い気持ちで読みはじめて、途中でやめられなくなり、一気読み。書かれているのは、中国からパキスタン、インド、ネパールを経てチベットに至り、そして中国を抜けて帰国する9か月に及ぶアジア漂泊の旅。でも、これ…

 タルコフスキー『ノスタルジア』を観た

「心を込めて祈りなさい。上の空では何も起こらない」 最初にそう言うのです。 イタリアのシエーナの教会の「ただの監視人」が。あるいは、この物語の道化が。 そう、ただの人が、監視人のような、郵便配達のような人(これは『サクリファイス』に登場する道…

ふたたび近松、そして上田秋成、あるいは文学における近代について。

上田秋成の「狐」を語って、江藤淳いわく、作家を変身させたり回心させたりするのはイデオロギーではない。彼の心に巣喰う「狐」の仕業である。そして「狐」の存在を知らぬ人間には、「狐」と闘いながら暮らしている人間の足跡はたどり切れない。 この秋成の…

たとえば「日本語」について

江藤はこう書く。 「それは、現在までのところ、沖縄方言以外に証明可能な同族語を持たぬとされている特異な孤立言語であり、時代によって、あるいは外来文化の影響をうけてかなりの変化を蒙って来てはいるが、なお一貫した連続性を保って来たものである。し…

たとえば、近松、

近松の『傾城反魂香』をとおして、あるいは、「道行」という表現の形式をとおして、熊野比丘尼が語られ、熊野比丘尼が歌う「相の山」が語られ、熊野信仰が語られ、「信徳丸」の乙姫の道行きが語られ、「日本書紀」の影媛の嘆きの歌が語られ、そして江藤淳は…

 江藤淳は『日本文学史』の年表を見て驚いた。

それは、 「慶長5年(1600)を截然たる境として、日本の文学史がほぼ三十年間、見方によってはその倍に当る六十年間、文字通りの空白に帰してしまっている」 ということによる驚き。この空白の意味するところとは、 関ヶ原の戦役を境に、 「奈良・平安…